【現地発】降格臭を吹き消したルーニーがアンフィールドで誇示した“エバートン魂”

2017年12月11日 山中忍

防戦一方の青サイドを救ったルーニーのクオリティー。

決勝点に値する同点弾を決めたルーニー。その鬼気迫る表情は意気消沈していたエバトニアンに覇気を取り戻した。 (C) REUTERS/AFLO

 雪の舞うアンフィールドでの通算229度目のマージーサイド・ダービー(現地時間12月10日、プレミアリーグ16節)は、1-1の痛み分けに終わった。
 
 厳密に言えば、リバプールの方が痛みは大きいだろう。90分を通じて8割近くボールを支配し、現在プレミアリーグ得点王のモハメド・サラーのゴールで42分に先制するなど終始主導権を握りながら、たった一つのPKで勝点2を落としたからだ。
 
 逆にエバートンは、敵地で、しかも近年の両軍対決では記憶にないほど一方的に攻め込まれた内容のダービーで、勝点1を"勝ち取った"という心境だろう。終盤の77分に宿敵のリードを帳消しにしたPKが、キャプテンマークをつけた地元出身者のウェイン・ルーニーの演出によるものだけに余計にその想いは強いはずだ。
 
 ルーニーがPKを呼び込んだのは75分だった。中盤右サイドからボックス手前のドミニク・キャルバート=ルーウィンへロングパスを供給。これを受けた俊英FWはすかさず相手ゴール前に突進すると、リバプールのCBデヤン・ロブレンに倒され、主審のクレイグ・ポーソンは迷わず笛を吹いた。
 
 判定自体は、それほど難解なものではなかった。だがリバプールにすれば、指揮官のユルゲン・クロップが、「単なるボディーコンタクトだと思った」と話したように、まさに晴天の霹靂ならぬ"雪天の霹靂"のようなショッキングなものとなった。
 
 とはいえ、ピンポイントのロングボールでPKを呼び込んだルーニーのクオリティーに疑いの余地はない。そのラストパスは、防戦一方だったエバートンが、攻撃面で見せた唯一のハイクオリティーなプレーと言って良かった。
 
 さらにPKをゴールのど真ん中に蹴り込んだルーニーのひと蹴りは、希少なマイボールを焦りから無駄にしていたエバートンが、チームの精神力を示した数少ない場面の1つだった。
 
 当のルーニーは、同点のPKを決めた6分後にベンチへと退いたものの、落ち着いた面持ちで試合終了の笛を聴いていた。それでも、リバプールからのポイント奪取を可能にした得点の持つ意味の大きさは、ゴール直後のセレブレーションを見れば明らかだった。
 
 両手を広げ、エバトニアン(熱烈なエバートン・ファン)が陣取るスタンド付近へと走る表情から溢れていたのは、歓喜ではなく気迫。それまで、チームの攻撃を後押しする機会に全く恵まれていなかった青きサポーターたちを狂喜乱舞させたルーニーは、両の拳を強く握り締めながら2度、3度と吠えていた。
 

次ページルーニーのダービー初ゴールが、漂う降格臭を吹き飛ばす。

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