【小宮良之の日本サッカー兵法書】ハリルにとっても国内組にとってもE-1選手権は「最後のチャンス」

2017年12月03日 小宮良之

せっかくの機会を活かせなかった2年前

ロシアW杯グループステージでの対戦相手も決まり、残りの期間でより具体的な強化に取り組むハリルジャパン。戦力の底上げを果たすために、E-1選手権という機会を無駄にしてはならない。 写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 12月8日に開幕するEAFF E-1サッカー選手権の代表メンバーが、先月29日に発表された。
 
 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督らしさの出た選考になった。スピードのインテンシティーの高い初瀬亮(ガンバ大阪)、伊東純也(柏レイソル)が初選考。デュエルにこだわり、速い攻撃を志向しているのが分かる。
 
 もっとも、今回は中盤の人材で大島僚太(川崎フロンターレ)を復帰させ、三竿健斗(鹿島アントラーズ)を初招集。戦術的に利発で、ボールを持てて、動かせる選手も入れている。後者は、長谷部誠(フランクフルト)のバックアッパーになれるか、真価が問われる。
 
 この大会には国内組で挑むわけだが、これがロシアワールドカップに向けた「底上げ」に繋がらないと意味がない。
 
 思い起こせば2015年8月、東アジアカップ。Jリーガーで戦ったこの大会は、ほとんど戦力アップには結び付かなかった。
 
 当時の出場選手で、今も主力選手に数えられるのは、山口蛍(セレッソ大阪)だけだろう。もっとも、山口はハリルホジッチ政権発足の試合ですでにプレーしており、この大会を契機にポジションを奪ったわけではない。
 
 もうひとり、槙野智章(浦和レッズ)も最近の代表では活躍が目覚ましいものの、2年以上、メンバーには入りながら、出場機会が与えられることはほとんどなかった。
 
 前回の東アジアの盟主を決める大会では、ハリルホジッチがたびたびJリーグを軽視するような発言に及び、そこばかりが浮き彫りになった。
 
 2試合2得点と結果を残した武藤雄樹(浦和)はその後、招集すらされていない。チームを勝利に導いたわけではないし、プレースタイルがハリルホジッチの目指すシステムとは合わないのもあるのだろう。しかし、ゴールという結果を出したFWを選ばないという判断は、違和感を残した。
 
「活躍してもしなくても、監督の好き嫌いでメンバーは決まる」
 
 Jリーガーのなかで、厭世気分が高まった。正常な競争原理が働かない。そういう状況を作り出してしまったのである。
 
 ハリルホジッチを取り巻く批判的な空気は、結局のところ、その辺りに起因している。

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