西高東低の政治力とスーパースターの必要性を痛感した夜… AFCアニュアルアワード取材記

2017年12月01日 佐々木裕介

“出来レース”感は否めない受賞者の顔ぶれ。

FIFAのインファンティーノ会長(左から2番目)も加わり、AFC幹部が撮影に応じる。写真:佐々木裕介

 地鳴りのような「ウィー・アー・レッズ!」コールがスタジアムに響き渡り、浦和の街が真っ赤に染まったACL決勝の夜から4日、アジアサッカー連盟(以下、AFC)のスタッフはタイ・バンコクに集結していた。「AFCアニュアルアワード2017」が催されるためだ。年内、来季ACLの組分け抽選会が残されてはいるものの、主要主催行事の大取りを飾る祭典準備に奔放していた。

 
 会場はバンコクにある"アクスラ・シアター・キングパワー"。英プレミアリーグのレスター・シティーFCのオーナー企業が展開する免税旗艦店併設の舞踊歌劇場が今年の舞台となった。
 
 加盟協会の会長やホスト国タイの重鎮たちが顔を揃え、またFIFA会長も駆け付けた会場は賑わいで溢れていた。そしてパク・チソンやドワイト・ヨークといった元英プレミアリーガーをゲスト招待する演出に東南アジアらしさを感じ頬が緩んだ。
 
 今回も"西高東低"の政治力を強く感じた、というのが受賞者を眺めてみての筆者の率直な感想だ。当たり障りなく、角が立たないように賞を割り振った"出来レース"感は否めない。また受賞した者も逃した者も、感情を露わにする姿は皆無だったようにも感じた。事前に可否を知らされていたかのように。
 
 AFCはアワードに先駆けて、年間アジアベストイレブンとも言える、今季の"ACLベストイレブン"を発表していたのだが、優勝チームからはひとりも選出されないという衝撃的なニュースはメディア各社も報じた通り。前記の配分理論を持ってすれば、せめて阿部勇樹は入れて欲しかったと思うのは、筆者だけではないはずだ。
 
 ACL決勝戦後の公式会見で「(MVPは)個人的には僕じゃなかったかなという気持ちが強い」と、受賞した柏木のコメントが実に印象的だったのだが、彼の謙遜はあるにせよ、大会MVP受賞者すら選出されないAFCの選定基準には疑問符を付けざるを得ない。それは日本人選手が入っていないからという類のものではなく、閉ざされた密室での政治ありきの選定に時代錯誤を感じるのである。
 

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