【蹴球日本を考える】個の力量差を「嫌がられるプレー」で詰めた日本。ベルギー戦は確かな前進だ!

2017年11月15日 熊崎敬

ベルギー戦はW杯に向けて雛型となる戦いだった。

日本は立ち上がりから井手口、長澤らが守備面で上手く機能した。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 完封負けは喫したが、収穫のあるゲームだった。というのもブラジル戦ではできなかった、「敵に嫌がられるプレー」ができたからだ。
 
 スタメンには長谷部に代えて長澤を起用。アンカー山口の前に長澤、井手口が並んだ中盤は、立ち上がりから守備面で上手く機能した。前から前からプレッシャーをかけて敵のパスコースをふさぎにかかり、しっかりボールを奪うと間髪入れずに縦へとつなぐ。右サイドに起用された浅野が、いい形で裏を突いた。
 
 日本は守りによって主導権を握った。これはブラジル戦でもやりたかったこと。ブラジル戦では浮き足立った井手口も、この時の失敗を経て攻守に落ち着きを見せていた。失敗を糧にした、いい例と言えるだろう。
 
 もちろん、ベルギーのようなチームに90分間、前からプレッシャーをかけられるわけはない。ベルギーが巻き返しに出た後半、日本代表は個人技に揺さぶられ、自陣での守備に追われることになった。だがルカクにゴールを許すまでの出来は、決して悪くなかったと思う。
 
 ベルギーと日本では、個々の選手の力量に大きな差がある。日本が10なら、ベルギーは13、14。これが11人になったら、かなりの差がつく。
 
 だが日本は、敵に嫌がられるプレーをすることで、個々の数値の差を詰め、30分あたりまではペースを握った。後半は押し込まれたが、72分までは0-0のゲームをした。これは大きな自信になる。このベルギー戦はワールドカップに向けての雛型となるだろう。
 
 守りに収穫があった一方で、攻撃には課題が残った。
 2試合で1得点、セットプレーからの槙野のヘッドだけに終わった。ベルギー戦でも77分に敵のミスを突き、4対1という絶好機を迎えたが、杉本の左足シュートはGKミニョレに阻まれた。
 
 チャンスを作っているから、あとは決めるだけ。そう考えるファンもいるかもしれない。だが、これが日本の実力だ。一流のチームは最後のところをきっちりと締めてくる。
 アジアでは格の違いを見せている大迫は、遠目から狙うのが精一杯。前述した4対1の場面でも、杉本はもう一歩、踏み込んでいいところを早めに打ってしまった。絶好機なのに慌ててしまう。これは精神的に追いつめられて打つからだ。
 
 こういう頼りないフィニッシュを見ていると、守って数少ないチャンスをモノにする、弱者の戦い方に磨きをかけるしかないと思う。まずは守りでリズムを掴むこと。攻撃ではセットプレーを大事にしたい。吉田のヘッドは、得点力を欠く日本にとって貴重な武器だ。
 
 2試合を終えて勝点0。ヨーロッパ遠征はほろ苦い結果に終わった。だがこれは、あくまでも練習試合。初戦の失敗を糧にして、2試合目に今後のベースとなる戦いができたという点で、前進と言えるのではないだろうか。

取材・文:熊崎 敬(スポーツライター)
 
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