元コートジボワール代表の韋駄天が明かす、かつての恩師ハリルの人物像 「普段は優しいけど…」

2017年11月14日 羽澄凜太郎(サッカーダイジェストWeb)

エブエに聞いたハリル像。

インタビューの舞台となった浅草で着物姿の女性と笑顔で写真を撮ったエブエ。日本の文化に触れてテンションは上がっていた。 写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 2008年5月24日、豊田スタジアム。エマヌエル・エブエとヴァイッド・ハリルホジッチの2人は選手と監督という間柄で、コートジボワール代表の一員として、岡田武史監督が率いる日本代表とキリンチャレンジカップで対戦している。
 
 それから9年――。サムライブルーに0-1と惜敗したその時以来、自身2度目の来日を果たしていたエブエに会う機会に恵まれた。多岐にわたった話の中で、元コートジボワール代表の韋駄天は、現日本代表指揮官の人物像を語ってくれた。
 
 ハリルホジッチが「レ・エレファンツ(コートジボワール代表の愛称)」を指揮したのは、2008年5月から2010年2月までの約2年だ。アーセナルの一員としてアーセン・ヴェンゲル監督の薫陶を受けていたエブエは重宝され、代表チームでは恩師が指揮した21試合中18試合で起用された。
 
 そんなボスニア・ヘルツェゴビナ人指揮官の印象は、どう残っているのか? ハリルホジッチが日本代表の指揮官であることを知っていたエブエは、「普段は優しいんだけどね……」と苦笑いを浮かべながら続けた。
 
「ヴァイッドには、二面性がある。普段は凄く優しくて、他人をリスペクトできるんだけど、サッカーのことになると人が変わるんだ。勝利のことしか頭になくなるのさ」
 
 インタビュー中もジョークを交えるなど、明るい性分のエブエも、「サッカーのことでジョークなんて通じなかった」とお手上げだったことを振り返った。しかし、智将に対しては信頼も寄せており、ハリルホジッチの"凄い"ところを熱く説明してくれた。
 
「彼が凄いのは、いくらメディアから批判を受けても大丈夫なところさ。『この世界は常に批判を受けるもの』って考えを持っているんだろうね。だから、外野から、何をどれだけ言われようとも全く気にしないんだ」
 
 強気な振る舞いを見せていたというハリルホジッチだが、コートジボワール代表での監督解任は急展開だった。予選突破を決めていた2010年南アフリカ・ワールドカップの約3か月前、1月のアフリカ・カップでグループステージ敗退に終わった責任を問われたのだ。
 
 当時、コートジボワール代表の押しも押されもせぬ主力だったエブエは、内部事情に関する明言は避けたが、「ヴァイッドは、協会や内部の人間に何かを言われるのを凄く嫌がるんだ」と、チーム内で軋轢があったことを匂わせた。
 
 日本でも批判を受けることも少なくないハリルホジッチだが、エブエは「それはいつものことさ(笑)」と笑い飛ばし、日本代表のサポーターへは、この老将を信頼することを提言している。
 
「彼が日本代表の指揮しているのは、日本が好きだからだよ。じゃなかったら、今の仕事を受けてないと思う。彼はいくら批判されても、きちんと結果を出す監督だ。信じたことは突き通す人だし、日本のサッカーファンはヴァイッドを信じていい」
 
取材・文:羽澄凜太郎(サッカーダイジェストWeb編集部)
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