精度を高め、真のオーガナイザーへ――チアゴ|バイエルン

2014年02月20日 中野吉之伴

ラームとは阿吽の呼吸でゲームをコントロール

怪我もあって出遅れたものの、グアルディオラの戦術が浸透するにしたがい、周囲との連係も深化。チアゴが存在感を高めている。 (C)Getty Images

「チアゴを取るか取らないかだ」

 バイエルンの新監督に就任したジョゼップ・グアルディオラがクラブに唯一要求したのが、バルセロナ時代の愛弟子チアゴ・アルカンタラの獲得だった。

「我々は良いチームだが、6つの大会を戦い抜かなければならない(ブンデスリーガ、DFBカップ、ドイツ・スーパーカップ、チャンピオンズ・リーグ、UEFAスーパーカップ、クラブワールドカップ)。彼はボランチ、センターハーフ、サイドハーフ、トップ下、ウイングと複数のポジションでプレーが可能だ」
 と、その理由を説明した。

 しかし、チアゴは新天地ですぐに本領を発揮できなかった。グアルディオラのポゼッションサッカーはお手の物とはいえ、バルサのそれとは選手間の距離もパス回しのリズムも違う。いかに優秀なバイエルンの選手でも、新指揮官が求めるサッカーを身につけるまで時間がかかった。チアゴがいいとされるポジションを取っていても、パスが出てこない。あるいは、スペースを作るために動いているそこにパスが来てしまう。自分のリズムでプレーできないため、ミスパスも少なくなかった。

 不運も重なった。リーグ戦初先発の3節ニュルンベルク戦(2-0)で足首を負傷。62分にピッチを退くと、そのまま2か月間の戦線離脱を余儀なくされた。靭帯損傷だった。

 復帰したのは、11月の13節ドルトムント戦(3-0)。途中出場から復帰を果たすと、翌節から続けてスタメンで起用される。試合に出場することでコンディションは上がり、チームメイトとの息も合うようになっていった。とくに、ボランチで起用されているフィリップ・ラームとは阿吽の呼吸で、ゲームをコントロールしている。16節シュツットガルト戦(2-1)では、ロスタイムにセンセーショナルなジャンピングボレーを決め、チームを逆転勝利に導いた。

「13~14人を相手にしている感じ。人が付けないところにうまく配置されている。誰も行けないところに2~3人がしっかりポジションを取っている」

 敗戦を振り返ったシュツットガルトの酒井高徳のこのコメントは、チアゴを中心にグアルディオラのサッカーが浸透してきた事実を物語る。5-0で快勝した19節フランクフルト戦、チアゴはパス成功率93パーセント、リーグ新となる177回のボールタッチを記録した。

 ブンデスリーガで独走態勢を築くバイエルンだが、チャンピオンズ・リーグではここから気の抜けない戦いが続く。中盤のオーガナイザーとして、チアゴにはプレーの精度をさらに高めることが求められている。時折色気を出し、不必要にリスクの高いプレーを試みてボールを失う悪癖、その改善だ。
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