【番記者通信】ギグスが正式に監督となる可能性はゼロ|マンチェスター・U

2014年05月01日 マーク・オグデン

現在のユナイテッドに必要なのは経験と実績を持つ指揮官だ

ギグス、ポール・スコールズ、ニッキー・バット、フィル・ネビルといった、レジェンドOBがベンチに座る光景を見続けたい気持ちもあるが、今はチームの立て直しが最優先課題だ。 (C) Getty Images

 デイビッド・モイーズの解任に伴い、選手兼コーチのライアン・ギグスがマンチェスター・ユナイテッドの暫定監督に就任。初陣となったノリッジ戦(26日)で4−0の大勝を収めた。クラブのレジェンドであるギグスの下での初勝利ということもあり、ホームのオールド・トラフォードは久しぶりに高揚感に包まれた。

 言うまでもなく、ギグスはユナイテッドの象徴的存在であり、ファンの崇拝の対象でもある。ギグス同様の支持を得られるのは、ボビー・チャールトン、エリック・カントナ、そしてポール・スコールズの3人ぐらいだろう。サポーターによる後任人事の人気投票を行なえば、大差でギグスが選ばれるはずだ。
 
 しかし断言できる。来シーズン、この40歳のウェールズ人が正式監督に就任する可能性はゼロに等しい、と。
 
 もちろん、現時点でギグスは後任候補のひとりではある。しかし、迷走を続けるクラブの現状を踏まえれば、答えは容易に導けるはずだ。今のユナイテッドに必要とされる人材は、経験豊富で確かな実績を備える指揮官。つまり、ルイス・ファンハール(オランダ代表)やカルロ・アンチェロッティ(レアル・マドリー)のような存在だ。クラブの歴史の転換期になるかもしれない大事な来シーズンの舵取りを新人監督に託すなどというアイデアは、明らかに的外れなものなのである。
 
 アレックス・ファーガソンの後継者にモイーズを選んだクラブの決断は、完全に失敗に終わった。次期監督の任命権を持つエド・ウッドワード(最高経営責任者)には、同じ失敗を繰り返せる余裕など残されてない。ファンの声と情に流され、ギグスを正式監督に指名するような、安易な決断は許されないのである。
 
 今、ギグスの監督就任を求める声は大きくなりつつある。その発言に強い影響力を持つファーガソンも「ギグスに任せるべき」と訴える。おそらくいずれは、監督に招聘されることだろう。しかし、そのタイミングは今ではない。
 
 仮に、ギグスを正式監督に任命したとしよう。難しい状態にあるユナイテッドがもし来シーズン、序盤戦で超低空飛行を続ける事態に陥った場合、ギグスを引っ張り出したクラブ幹部やサポーター、そしてジャーナリストは、監督経験のないこの伝説的なウェールズ人に批判の矛先を向けられるのか? そして責任の所在はどうなるのか?
 
 ウッドワードCEOには、冷静な判断が求められる。
 
【記者】
Marc OGDEN|Daily Telegraph
マーク・オグデン/デイリー・テレグラフ
英高級紙で最大の発行部数を誇る『デイリー・テレグラフ』のユナイテッド番を務める花形で、アレックス・ファーガソン前監督の勇退をスクープした敏腕だ。他国のサッカー事情に通暁し、緻密かつ冷静な分析に基づいた記事で抜群の信頼を得ている。
 
【翻訳】
田嶋康輔
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