ミラン買収オファー報道の真相――移籍専門記者ディ・マルツィオの「取材ノート」

2014年04月25日 ジャンルカ・ディ・マルツィオ

「ミランは5億ユーロ以上の価値がある」。

ピーター・リムがミランに経営権買収オファーを出したというガゼッタ紙の報道は、どうやら間違いだったようだ。オーナーのベルルスコーニも売却を否定。 (C) Getty Images

 4月24日付の『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙にシンガポールの大富豪ピーター・リムが、ミランに経営権買収のオファーを出したというスクープ記事が出て話題をさらった。
 
 しかし我々の情報源によれば、24日にマドリードに滞在していたリムは、正式なオファーを出したわけではなく、単に経営権譲渡の可能性があるかを打診して、断りの返事をもらっただけだという。
 
 そもそもの話は昨年11月、リムがミランの経営権(発行済株式の過半数)を4億5000万ユーロ(約630億円)と見積もったところから始まっている。それに対してミランは、5か月間沈黙を保ってきたが、最近になって逆にリムに資本参加の可能性があるか打診したというのが真相。ミランとしては、なんらかの形でリムをビジネスに巻き込みたいのかもしれない。
 
 これに対し、リムの側は違う考えを持っているようだ。もし今後経営権買収のオファーを出すとしても、その金額は低めの3億5000万ユーロ(約490億円)前後に収まりそう。ミランの大株主『フィニンベスト』社がこれを受け入れるとは考えられない。
 
 このニュースに絡むもうひとつのエピソードは、インテルのオーナー、エリック・トヒルも最近、ミラノでリムと会っているという事実。トヒルの側からプロジェクトへの参加を持ちかけたが、インテルのブランド力がミランより低いこともあって、リムは興味を示さなかったようだ。とはいえ、シンガポールの大富豪がサッカーの世界に投資したがっていることは間違いない。はたして、今後どんな動きがあるのか。
 
 一方、ミランのオーナー、シルビオ・ベルルスコーニは、24日放送された討論番組『ポルタ・ア・ポルタ』の収録で、次のようにコメントしている。
 
「ミランは売り物ではない。5億ユーロ(約700億円)以上の価値がある」
「5億1000万ユーロ? 冗談じゃない。聖なるものに触れてはいけない」
 
 ベルルスコーニに売却の意思はないようだ。
 
文:ジャンルカ・ディ・マルツィオ
翻訳:片野道郎
 
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