【番記者通信】セ―ドルフの未来はいまだ不透明|ミラン

2014年04月24日 レナート・マイザーニ

チームの上昇とともに監督とクラブの関係が悪化する矛盾。

現有戦力の力を可能な限り引き出した結果、セ―ドルフは自らチームの限界を示してしまったということか……。 (C) Getty Images

 カルチョの世界においては、次のような言い分がまかり通っている。最優先されるのは結果であり、監督の業績は稼いだ勝点でのみ評価されるものである――。したがって、いくらチームに美しいサッカーをもたらそうが、順位が振るわないのであれば、解任の憂き目に遭うことは、特にイタリアでは頻繁に起こっている。
 
 ところがこれまでのところ、クラレンス・セードルフ監督を取り巻く状況は、まったく逆である。
 
 現在、ミランはオランダ人監督の下、カルロ・アンチェロッティ監督の時代以来となるペースで勝点を稼いでいる。当然、セ―ドルフは、来シーズンもチームに残留して指揮を執る意思があることを明言しているのだが、同時にチーム内の空気に戸惑いを感じていることも明かしている。
 
 その原因は、選手のなかにセードルフの采配を100パーセントは認めていない者がいることだ。さらにそれは選手間にとどまらず、フロントにもセードルフに対する懐疑論者が存在しているという。現在のセードルフは、就任当初のようにすべての関係者から全幅の信頼を置かれているわけではないのだ。
 
 何とも矛盾した話である。就任当初、結果が出なかった時には、クラブは一貫してセ―ドルフを擁護したというのに、チームが結果を出し始めるなど良い流れに転じた途端、なぜか両者の関係にヒビが入ってしまったのだから……。
 
 とはいえ、ピッチの上でのミランは本当に良くなった。守備はコンパクトで、前線はチャンスに強いという、監督なら誰しもが理想とするチーム状態を保っている。試行錯誤が続いた就任当初とは打って変わり、いまやセードルフは理想とする11人のスタメンを固めた。選手をうまく戦術に適応させ、内容的にも上々のサッカーを披露している。
 
 今後セードルフは、リッカルド・モントリーボとは違うキャラクターを持つレジスタを、チームに要求するだろう。そして現在は本田圭佑が務めている右サイドに、よりこのポジションに適合できる選手の補強を考えているに違いない。これに伴い、本田はトップ下にポジションを移してカカの代役となるか、あるいはカカが移籍する場合には、その後継者となるだろう。クラブがセードルフのこれらの願いに耳を傾け、要求通りの戦力を用意するならば、ミランが短期間のうちにイタリア・サッカーの王者に返り咲くことも、そう困難なことではないかもしれない。
 
 しかしこれは一方で、現状のミランの限界を示してもいる。セードルフは現有戦力の能力を十分に引き出していると思われるが、それゆえにチームとしては今以上の成績は望めない――。そのことがクラブに、セ―ドルフ続投を確約することを渋らせているのだろうか……。
 
【記者】
Renato MAISANI
レナート・マイザーニ
1985年カターニャ生まれ。2006年から地元紙やWEB媒体でキャリアを積み、ミラノに軸足を移して活動の場を拡げる。現在はイタリア国内の著名ポータルサイトの編集員。国外サッカーにも通じ、地元紙でフランス・リーグのレビューを連載中だ。
 
【翻訳】
神尾光臣
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事