【指揮官コラム】鹿児島ユナイテッドFC監督 三浦泰年の『情熱地泰』|ロシアへ「今」をしっかり見極めなければ

2017年10月10日 サッカーダイジェストWeb編集部

僕の思う、真のプロはどんな状況の試合も自分たちの試合にする。それが本当の力だ。

日本代表は10月にニュージーランドとハイチと対戦。FIFAランクでは格下の相手だが、W杯までに貴重な試合であることは間違いない。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 ロシア・ワールドカップを決めた日本代表が親善試合を行ない、J1リーグは一時中断。一方でJ2、J3は継続してリーグを消化している。
 
 代表はいま、貴重な時間を強化に費やしている。ヨーロッパ、南米、アフリカではワールドカップの切符を賭けた試合を行っている最中で、アジアでもプレーオフが行なわれている。何の意味があるのかと、この親善試合を戦っては決していけない。
 
 大事な時間だ。
 
 日本代表には、目の前にあるワールドカップの切符を掴むための力と戦術はあった。それが埼玉スタジアムのオーストラリア戦だ。しかし、サウジアラビアに勝つ力と戦術はなかった。
 
 異なる2つの試合。ここに日本のサッカーの課題がある。
 
 ひとつは勝てばワールドカップが決定。ただし、勝たなければロシアへの道が険しく苦しいことになる。勝たなければいけない試合だ。
 
 もうひとつは、逆に来年のワールドカップ出場を決め、勝っても負けてもグループ1位突破を決めた後の試合。戦術的な部分でもメンタル(気持ち)的な部分でも、良い意味でリラックスしながら自分たちらしさを出せ、失うモノもなく、掴んだものは離れていかない、やって来たサッカーを思い切って出せる試合。ある意味、本来の自分たちの姿を披露できる試合だった。
 
 勝たなければいけない試合にはしっかり勝って、失うものが何もない試合は落とした。これは力があるのか? ないのか?
 
 ニュージーランドとの親善試合は、サウジアラビア戦に近い試合でもある。
 
 繰り返すが、それは「ある意味、本来の自分たちの姿」。目指すべきサッカーをやれる。トライできる試合なのである。
 
 その試合が物足りなくても、本番で勝てば良いのか?
 
 すべてを求めたいが、本来の力とは追いつめられた時に出せる力なのか? それともそうでない状況の時に現われる『本性』みたいなものが本当の力なのか? どうなんであろう……。
 
 ただしオーストラリア戦のように、すなわち懸かった試合。いざ勝負、という試合。これに勝つことが求められているのが、プロの勝負の世界で生き抜くうえでは大事な要素なのであろう。
 
 例えば、Jリーグで言えば各クラブは大学生や地域リーグ、JFLチームを相手に練習試合を行なう。「舐めるな! ビックゲームだと思え! 集中しろ! 大事な試合だぞ!」と言っても、モチベーションを公式戦並みに上げるのは簡単なことではない。
 
 やはり公式戦とは違うのだ。
 
 逆にそういった格下のチームは、プロチームに対して全力で良いファイトを出してくる。それはアマチュアなのである。
 
 アマチュアはどんな試合でもファイトするが、プロは試合を選ぶ。僕の思う、真のプロはどんな状況の試合も自分たちの試合にする。それが本当の力なのだと思う。

次ページ日本代表にとっては親善試合だろうが、トレーニングだろうがチームでの活動すべてが貴重な時間。

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