【現地発】「問題児D・コスタ」の亡霊を「優等生モラタ」がハットトリックで葬る

2017年09月25日 山中忍

最もタフと恐れられるアウェーのストーク戦で魅せた。

胸のエンブレムを叩き、自身の存在とチームの強さを誇示したモラタ。その存在感は、とてもプレミア挑戦1年目とは思えないものだ。 (C) Getty Images

「他チームに強烈なメッセージを発信できた」。
 
 チェルシーがストークを4-0で下した現地時間9月23日に行なわれたプレミアリーグ6節後のヒーローインタビューで、アルバロ・モラタはそう語った。
 
 今夏の移籍市場でレアル・マドリーから加わったモラタが、移籍後初のハットトリックを達成した一戦。その発言は、優勝争いにおけるチームの存在アピールのみならず、指揮官のアントニオ・コンテに対するメッセージとも言える。昨シーズンまでのエース、ジエゴ・コスタが「もはや過去の存在」という意味で、だ。
 
 監督と選手の絶対的上下関係の拗れから構想外と決めたD・コスタに関する質問に、コンテはプレシーズン中から苛立っていた。ジョークで笑い飛ばした時期もあったが、最終的には、「話すことなど何もない」として事実上のノーコメントで押し通すようになった。
 
 そんな中、開幕前哨戦にあたるコミュニティーシールドとプレミアリーグ5節で、フィジカル戦を苦手とするアーセナルを相手に1分け1敗に終わり、良くも悪くもD・コスタの特徴だった「アグレッシブさ」が足らないと獲得にクラブ史上最高額(6500万ユーロ=約83億円)を要したモラタは、批判の矢面に立たされた。
 
 そのモラタが、相手のCBが駒不足だったとはいえ、心身両面で最もタフとも言われる「アウェーのストーク戦」で気を吐いたのだ。奇しくも、チェルシーでは3年前のD・コスタ以来となるプレミアでのハットトリック。それは昨シーズンまでの主砲とは対照的な特長の成せる業でもあった。
 
 D・コスタは正対したり、背を向けたりした相手DFを力でねじ伏せるタイプだった。これに対してモラタは、さりげなく敵のマークから逃れてチャンスに絡み、人知れず相手SBとCBや、CBの間に入り込んでゴール前に出てくるのが特徴だ。
 
 その好例は、ストーク戦で決めた1点目と3点目にある。右足インサイドで流し込んだ1点目と、つま先で押し込んだ3点目は、いずれもペナルティーエリア内で簡単に決めた印象があるかもしれないが、敵の守備をクレバーに掻い潜り、ゴールを取るためにいるべき所に動いていたからこその、見事なフィニッシュだった。
 
 また、両ゴールを演出した同郷のセサル・アスピリクエタとは、新ホットライン形成の予感もある。3節のエバートン戦(〇2-0)と4節レスター戦(〇2-1)では、アスピリクエタのクロスにドンピシャのタイミングで走り込んだモラタが頭で1点ずつを決めてもいる。

次ページ「D・コスタなど必要なし!」英国メディアもモラタを絶賛。

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事