【FC東京】独特な“安間節”から見える「9試合暫定監督」の哲学の一端

2017年09月19日 志水麗鑑(サッカーダイジェスト)

「相手の最終ラインの位置が肝」

安間監督は仙台戦後、独特な言い回しで試合を振り返った。写真:田中研治

[J1リーグ26節]FC東京1-0仙台/9月16日/味スタ
 
 9月10日、篠田善之前監督が退任し、暫定的に今季の残り9試合を指揮するFC東京の安間貴義新監督は、クラブのホームページでこんなコメントを残していた。
 
「これからの9試合を来シーズンにつなげていけるようにしたいと思います。1試合1試合を全力でFC東京らしく戦っていきたいと考えています」
 
 この時には明らかにならなかった「来シーズンにつなげる」の一部分だが、初陣を飾った仙台戦後の会見で、独特な"安間節"から垣間見えた。
 
「大量失点が続いていたが、守りを固める方法はしなかった。もう一度、自分たちのストロングポイントに戻り、ボールを保持することで(守備の時間を少なくして)失点は減る。その取り組みの結果、無失点で終われてよかった」
 
 試合を振り返った指揮官は、まず冒頭でこう述べた。ディフェンスを固めることではなく、あくまで「ポゼッション」に重きを置いていることは、57%(FC東京)対43%(仙台)のボール支配率が物語っている。だが、「ただ、ボールを保持するだけではない」とも話を続ける。
 
「前半のように、ボールを回すと相手はプレスをかけてくる。そうすると相手の最終ラインはハーフウェイラインくらいまで上がっている。それに気づいていない。まだまだ、ボールを保持することに一貫してしまっている。やっぱり相手の最終ラインの位置が肝だから、それを見ながらボールを動かさないと」
 
 後ろの選手は相手のディフェンスラインの裏のスペースを見つけ、前線の選手はそこを狙いゴールに迫る。指揮官は「相手の最終ラインの位置」をポイントに挙げ、得点を奪うための道筋を示した。
 
 もちろんこれは、あくまでひとつの方法に過ぎないだろう。だが、「ボールを保持すること」に特化した"安間流"の要求は、明らかに選手を蘇らせていた。それは決勝点を挙げたチャン・ヒョンスの「楽しむサッカーをやり遂げた」の言葉からもよく分かる。
 
 会見で自身のサッカー論を語る戦術家にとって、仙台戦は9分の1試合。「ラストパスを出せるところまで、ボールが行かない。それができるようになってから精度の話に入る」と残り8試合で、さらなる向上にも意欲を覗かせる。
 
 短い期間でチームに落とし込みたいサッカー哲学が多くあるようだが、それを独特な言い回しでこう言う。「サッカーって近づけば近づくほど、遠くなってくる。出来るようになったら次の課題が見えてくるので、その段階を追ってやらなければならないと思う」
 
 会見後には「話していること分かりました?(作戦)ボードがあれば、もう少し上手く説明できるんですけどね」と声を掛けてきた。その表情は、"9試合暫定監督"を楽しんでいるようにも見えた。
 
取材・文:志水麗鑑(サッカーダイジェスト編集部)
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