【番記者通信】ブーイングは驚嘆に。ファンの心を掴んだロッベン|バイエルン

2014年04月11日 パトリック・シュトラッサー

責任感が増し、リーダー的存在に。

得意の左足でダメ押しの3点目を決めたロッベン。グアルディオラ監督も「卓越している」と手放しで称賛する。 (C) Getty Images

 マンチェスター・ユナイテッドにとどめを刺す3点目は、実にアリエン・ロッベンらしいゴールだった。右サイドから仕掛け、グイグイと中に切れ込み、左足で狙い澄ます得意の位置へとボールを運んだ。

 幸運にも助けられたゴールだった。シュートは相手DFに当たってコースを変え、ネットを揺らした。ロッベンはサポーター席に駆け寄り、祝福を浴びた。これは新しいロッベンだ。そう、11-12シーズンのチャンピオンズ・リーグ(CL)決勝でチェルシーに敗れて以降、ちょっとでも自己中心的なプレーを見せると、ロッベンにはたちまちブーイングが浴びせられた。それがいまは違う。ブーイングは驚嘆に変わり、ロッベンは試合を決定づける選手になった。

 この試合のマン・オブ・ザ・マッチに輝いたロッベンは、ここ最近は左サイドで対となるフランク・リベリをしのぐ勢いがある。バイエルンとの契約を延長し、責任感が増してリーダー的存在にもなった。ここまでチームに欠かせない存在だったことはなかった。ジョゼップ・グアルディオラ監督もただただ「卓越している」と褒めるばかりだ。CLの直近の11試合で7ゴールを奪い、アシストは5つ決めている。

「こういう試合のためにサッカーをしている。本当にすごく楽しい。このために生きてるんだってそう思えるし、このために練習をしているんだ」
 そう語るロッベン。

 リスボンでの決勝まで、あと1勝。準決勝の相手は、ロッベンの古巣チェルシーになる可能性がある。これは特別に面白みがある組み合わせだ。2シーズン前の決勝で屈したチェルシーには、ロッベンはまだ個人的に借りがある。あの時のファイナルの延長戦で、決勝点になるはずだったPKを外したロッベンは、ファンから戦犯者と責められた。その汚名を返上するチャンスを、背番号10は待っている。
(編集部・注/4月11日の抽選の結果、バイエルンの準決勝の相手はレアル・マドリーに)

【記者】
Patrick STRASSER|Abendzeitung
パトリック・シュトラッサー/アーベントツァイトゥング
1975年ミュンヘン生まれ。10歳の時からバイエルンのホームゲームに通っていた筋金入りで、1998年にアーベントツァイトゥングの記者になり、2003年からバイエルンの番記者を務める。2010年に上梓した『ヘーネス、ここにあり!』、2012年の『まるで違う人間のように』(シャルケの元マネジャー、ルディ・アッサウアーの自伝)がともにベストセラーに。今年5月にはバイエルンのCBダンチの自伝を出版予定。

【翻訳】
円賀貴子
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