松本山雅のブラジル人J2マスターに訊いた「終盤戦を勝ち抜くキーポイントは?」

2017年09月11日 川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

「ああいうゴールは初めてだったので嬉しい」。

初来日から7年が経ったパウリーニョ。Jリーグの酸いも甘いも知る28歳が松本山雅の中盤を力強く牽引する。(C)J.LEAGUE PHOTOS

 鮮やかすぎる先制ゴールだった。
 
 J2第32節、松本山雅は東京ヴェルディの本拠地に乗り込み、2-1の快勝を収めた。事前の綿密なスカウティングが奏功し、攻守両面で見事な組織力を披露。昇格レースのライバルを直接叩き、7節以来となる今季最高位(5位)に浮上した。
 
 その会心のゲームで、異彩を放ったのがブラジル人のお馴染みボランチ、パウリーニョだ。
 
 中盤を所狭しと疾駆し、的確な潰しと正確な長短のパスでチームを牽引した。54分には敵陣深くまでボールを追い込み、奪い切るや右足を一閃! 美しい放物線を描いた25メートル弾で先制点をもたらし、敵地に駆け付けたおよそ5000人のサポーターを熱狂させた。
 
 そして繰り出したのが、ゆりかごパフォーマンスだ。
 
「8月1日に子どもが生まれたんだけど、なかなかゴールを決められなくてね。パフォーマンスをしたことでサポーターも喜んでくれたから最高だ。息子の名前? サムエルっていうんだ」
 
 値千金弾については、「シュートモーションに入りながらキーパーの動きが読めた。ああいうゴールは初めてだったので嬉しい」と振り返り、「まあ自分のゴールよりもチームが勝利できたことのほうが大事」と、優等生なコメントを残した。
 
 2010年の夏に初来日して、早や7年の歳月が流れた。グレミオ、ヴァスコ・ダ・ガマとブラジルの名門で研鑽を積んだボランチは、栃木SCで4シーズンを過ごしたのち、川崎フロンターレ、ジェフ千葉、湘南ベルマーレと1年置きに鞍替えする渡り鳥生活。そして昨年夏に松本の地を踏み、反町康治監督の信頼を勝ち取った。
 
 この日の東京V戦が、Jリーグ通算195試合目(13得点)。J2は171試合目で、まさに酸いも甘いも知る「外国籍マスター」と言えよう。
 
 2016年シーズンはJ2で3位となり、昇格プレーオフを戦ったが、準決勝でファジアーノ岡山の後塵を拝した。同じ轍は踏めない。歴戦の勇士パウリーニョは、残り10試合のキーポイントはどこにあると考えているのか。シンプルにこう答えた。

「長丁場だからね。シーズンのラストはどうしても疲労との戦いになる。溜めこまないようにコンディションを維持することが大事だ。つまるところ、そこが大きな分かれ目になると思う」
 
 サポーターへのメッセージを問われ、「いつもみなさんありがとう。一緒に夢を叶えましょう」と即答した28歳。松本山雅を2年ぶりのJ1へと導く、水先案内人のひとりだ。

文:川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)
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