【東京V】スコアでは推し量れない完敗…好調ヴェルディになにが起こったのか

2017年09月11日 川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

松本のロングボールに備え、5バックで対応したが…。

東京Vは83分にドウグラスが意地のゴールを決め1点を返すが、それが精いっぱい。本拠地・味スタで、松本に完敗を喫した。(C)TOKYO VERDY

[J2第32節]東京V 1-2 松本/9月10日/味スタ
 
 スコアは僅差ながら、内容は散々だった。
 
 J2第32節、東京ヴェルディはホームに松本山雅を迎えた。試合前の暫定順位で前者が8位、後者が9位。勝点差はわずか1ポイントだ。勝ったほうがプレーオフ圏内に浮上する、やるかやられるかの一戦だ。
 
 両指揮官とも、対戦相手に緻密なスカウティングを施し、万全の準備で臨んだ。松本の反町康治監督は「ヴェルディにサイドで数的優位を作られるのはある程度しょうがない」と割り切り、あくまで完成度を高めてきた3-4-2-1システムを貫いた。それに対し、ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督はやや受け身な"変化"を付けた。ここまでの6戦不敗(4勝2分け)を支え、拠り所としてきた4-3-3をいじったのである。
 
 敵将の反町監督は「渡辺(皓太)と梶川(諒太)のハイプレスが厳しい。あの第1波を飛ばせれば、第2波で勝負できる」とポイントを定めた。つまりは、中盤を省略したロングボールの多用だ。ただ、歴戦のロティーナ監督はこれを見越していた。守備時は右ウイングの安西幸輝をぐっと下げて5バックで対応、攻撃時は通常の4-3-3で戦う選択をしたのだ。
 
 しかしながら、6戦不敗時のストロングポイントは完全に消え失せた。プレスへの意識が乏しいカルロス・マルティネスを1トップで起用したのもあるが、選手個々の距離が開きすぎてしまい、戦術の肝だった前線からの連動したフォアチェックがまるではまらない。渡辺は「それまでのようにボールを獲れるって感覚が持てなかった。スタート地点が低かったんです」と話し、アンカーの内田達也は「やっぱり前から行けなかった。みんなどこに立ったらいいのか分かってない感じでした」と回顧する。
 
 20分には安西が右サイドを抉って好クロスを送り、アラン・ピニェイロが頭で合わせたショットがバーを叩いた。だが見せ場はこの一回のみ。松本のハイプレスにたじろくばかりで、ターゲットマンのマルティネスは屈強な3バックに封じ込められ、カウンターの糸口さえ見いだせない。
 
 そこでロティーナ監督は、35分過ぎから、本来の4-3-3に戻すのだ。「きわめて難しい展開。まるで機能しておらず、プレーするスペースを確保できなかった」と、みずからの非を認めた。しかしそれでも流れは変わらない。一度狂った攻守の歯車は容易には修正できなかった。
 
 後半になっても松本のペースは変わらない。しびれを切らしたスペイン人指揮官は53分、温存していたドウグラス・ヴィエイラをマルティネスに代えて投入する。だがその1分後、ものの見事に先制点を奪われてしまう。自陣深くで松本のMFパウリーニョにボールを奪われ、そのまま鮮やかなループミドルを決められた。チーム全体の危機管理の乏しさが招いた失点だ。
 
 さらに5分後、追い打ちをかけられる。あっさりと左サイドを破られ、最後はゴール前に陣取ったFW高崎寛之の落としをMF工藤浩平に難なくねじ込まれた。勝負所を嗅ぎ分けられないヴェルディに対し、松本は好機到来とばかりに畳みかけていた。そんな時間帯だ。
 

次ページラスト10戦の相手はなかなかタフである。

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