【FC東京】チグハグだった篠田体制。象徴された“あのワンシーン”

2017年09月11日 志水麗鑑(サッカーダイジェスト)

大久保とP・ウタカの不満げな表情が物語る。

あるシーンでふたりのストライカーが何かを訴えかけるような不満げな表情を示した。(C)SOCCER DIGEST

[J1リーグ25節]FC東京1-4C大阪/9月9日/味スタ
 
 FC東京は前半にC大阪に2点を先行されて迎えた後半、71分にピーター・ウタカの得点で1点差に縮めた。ホームチームには反撃のムードが漂っていたが、75分に今季のFC東京を象徴するかのようなシーンがあった。
 
 C大阪の木本恭生にバックパスが渡ると、そこに猛然とP・ウタカがプレッシャーをかける。木本はたまらずGKまでボールを下げ、そこにも大久保嘉人が連動してハイプレスを見舞った。勢いそのままP・ウタカも続き、ふたり揃ってGKにプレッシャーをかけたが――。
 
 彼らに続いて連動した守備をしていたのは、永井謙佑と髙萩洋次郎だけ。そのふたりのマークを外してパスをつながれて、プレッシングの網は簡単に掻い潜られた。
 
 後ろを振り返った大久保とP・ウタカは揃って、何かを訴えかけるように不満気な顔で両手を広げた。体力的にきつい時間帯に味方が連動しなかったことで、自らの頑張りが無駄になったのだから当然だ。
 
 もちろん、後ろの選手たちにも多少のエクスキューズはあるだろう。P・ウタカや大久保がしっかり周囲と意思疎通していれば、上手くプレスがハマったかもしれない。だが、チームの守備意識が統一されておらず、バラバラだったのは一目瞭然だった。
 
 結局、FC東京はホームでC大阪に1-4の惨敗。試合後、うなだれたような表情で永井が口を開いた。
 
「前半はひどかったね、攻撃は俺と嘉人さんだけ。もっと全員でコンパクトにやらないと。ボールを失っても、すぐに全員で守備できるくらいの距離感で。1点目はイージーなミスだった。こういう悪い時にああいうことをしてはいけない」
 
 FC東京がチームとしてチグハグだったことは、永井の言葉からも分かるだろう。シーズン前に大型補強を敢行して、期待が膨らんだ今季は、意に反して苦しい時間を過ごしている。また、試合の翌日には篠田善之監督の退任が発表された。

 試行錯誤を繰り返しても状態が上向かなかった「篠田東京」はシーズンを待たずして幕を閉じた。暫定的に指揮を執る安間貴義監督のもと新たな船出となるが、チーム一丸となった姿は見られるのだろうか。
 
取材・文:志水麗鑑(サッカーダイジェスト編集部)
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