「名前で守れる」センターバックへ。本物への階段を登る昌子源の存在感

2017年09月10日 サッカーダイジェストWeb編集部

鹿島OBの秋田氏は言う。「本物のセンターバックは顔や名前で守れるようになる」。

昌子は代表の疲れも見せずに無失点に抑えて見せた。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

[J1リーグ25節]鹿島1-0大宮/9月9日/カシマ

 悪夢は繰り返されなかった。
 
 終盤、1点を追う大宮がパワープレー気味に攻め込んできた。ロングスロー、ロングボールがゴール前に入れられる。立ちはだかったのは日本代表から帰ってきたセンターバックコンビの昌子源や植田直通であり、または彼らの指示を受けたチームメートだった。
 
 昌子は「ルヴァンカップの仙台戦で5失点した。少なからず自分やナオ(植田)への期待や(鹿島サポーターの)頼むぞという思いは感じていた」と時差ぼけや気候への対応が難しいなかで覚悟を持ってピッチへ向かったという。そして、クラブ新となるホーム6試合連続無失点で勝点3を手繰り寄せた。
 
 鹿島はルヴァンカップ準々決勝、仙台との2試合で5失点を喫した。ふたりの主戦センターバックが日本代表派遣で不在。負傷中の町田浩樹に加え、第1戦で退場処分を受けたブエノが出場停止で、逆転を狙った第2戦は本職のセンターバックはひとりもいなかった。
 
 結局、2戦合計4-5で敗退。大岩剛監督はセンターバックとして起用した、サイドバックの山本脩斗と、センターバック経験はあるもののボランチを主戦とする三竿健斗について「彼らはよくやってくれた」と責任を押しつけず、ふたりの不在と失点数の因果関係を公には認めなかった。ただ、この日の試合を見るにつけ、当然ながらふたりの影響は少なくなかったと言えるだろう。
 
「(本職の)センターバックがいない影響が一番出るのが(ルヴァンカップで失点を重ねた)セットプレーだと思う。俺らが集中するぞ!守るぞ!という声を出すのと、本職じゃない選手が出すのにはチームの引き締まり方が違ってくると思っている。そういう存在感みたいなものがセンターバックにはあると思っているから、大宮戦ではそういう存在感みたいなものを出していきたい」(昌子)
 
 鹿島OBで、日本を代表するセンターバックのひとり、秋田豊が現役時代に自身の体験から「本物のセンターバックは顔や名前で守れるようになる」と話したことがある。ボールを失うことを恐れた相手FWが仕掛けること、抜くことを最初から諦め、「逃げ」のパスを選択することが増える。または手の届かないところでボールを触ろうとする。それを「名前で守る」と例えたのだった。もちろんその領域に達するためには高い能力も必要だが、それ以上に止めた、奪った実績の積み重ねが「大事なんだよね」と説明した。
 
 鹿島で実績とタイトルを積み重ね、日本代表でも今やセンターバックとしても前進している昌子。「名前で守る」と「存在感で守る」。発する言葉に違いはあるが、目指すセンターバック像としては同じように映る。そこにいるだけでチームの力になり、直接的な守備をしなくても、チームの危機を減らせる存在。昌子はその道に気づき、そして「本物」への階段を上がり始めている。

【鹿島 1-0 大宮PHOTO】盤石の試合運びで勝利の鹿島が首位を堅持!

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事