【現地コラム】ファンや仲間に守られた21歳のゴールマシン――ヴェルナーはドイツ代表の希望だ!

2017年09月07日 中野吉之伴

文句は口にせず、プレーで自分の思いを届けようとした

今年3月のイングランド戦で代表デビューし、ここまで8試合出場・6得点を記録している21歳のヴェルナー。いかなる状況にも心乱すことなく、あのクローゼを彷彿とさせるゴールマシンぶりを披露している。 (C) Getty Images

 スタジアム中を温かい声援が包み込んでいた。
 
「ティーモ・ヴェルナーーーー!!!」
 
 何度も何度も彼の名前が叫ばれ、大きな大きな拍手が送られ続けた。それは、ドイツ代表チームのために全力でプレーするひとりの若者を守ろうとしたファンからの、明確なメッセージだった。


 9月1日にプラハで行なわれたチェコ代表とのロシア・ワールドカップ欧州予選、ドイツは2-1で勝利したが、アウェーまで駆け付けたファンの一部による心ない行ないが、会場に異様な雰囲気をもたらしてしまった。この試合で先制ゴールを挙げたヴェルナーに対して、彼らは歓声ではなく、罵詈雑言を浴びせたのだ。
 
 要因と考えられているのは、ヴェルナーが犯したひとつの行為である。昨年12月のRBライプツィヒ対シャルケ戦で、彼は明らかなシミュレーションでPKを獲得。さらにそれを自分で決めたことで、他クラブのファンから怒りを買い続けている。
 
 ヴェルナーは後日、これに対して謝罪したが、ライプツィヒというクラブへの嫌悪と相まって、人々からはなかなか受け入れてもらえなかった。代表でのプレーを快く思っていないファンも、残念ながらいる。 
 
 サポートしてくれるはずのファンからブーイングを浴びたら、どんな選手でも心に大きな痛手を負うだろう。だが、ヴェルナーはファンへの文句は口にせず、ピッチ上で愚直になほど全力で走り、戦い続けることで、自分の思いを届けようとしていた。
 
 そんな彼を、仲間は支えた。チェコ戦後、代表チームは試合後に挨拶に行かないことを決断。DFマッツ・フンメルスは、チーム全員の思いを以下のように代弁していた。
 
「あのブーイングは、本当にひどい! 黙祷の時にも悪いマナーがあった。ヴェルナーは侮辱された。もちろん、加担してないファンには申し訳ない。でも我々は、自分たちがやっていることの意味を自覚していながら、サッカーを壊そうとする連中をスタジアムから遠ざけなければならない」(『ビルト』他各紙より)

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