【蹴球日本を考える】J2屈指の陣容誇る名古屋にも怯まない“面倒なチーム”。水戸がホームで負けないワケ

2017年09月03日 熊崎敬

正確性で勝負するのではなく、雑にも見えるロングパスで敵を困らせる。

水戸は名古屋とホームでドロー。J2屈指の陣容を誇る強豪を相手に善戦を見せた。写真:徳原隆元

 J2中位とはいえ、ホームの水戸は侮れない。今季ホーム開幕戦で湘南に敗れたものの、その後は無敗。この名古屋戦も勝点3は逃したが、巧みな試合運びでホームでの連続不敗を14試合に伸ばした。

【PHOTOギャラリー】水戸が名古屋と引き分け、ホームで14戦不敗! 
 
 J2屈指の陣容を誇る名古屋と、同じ土俵で勝負したら勝ち目はない。そのことを知る水戸は、中盤での激しい出足で名古屋のリズムを壊すところからゲームを始めた。
 
 中盤でのプレスからボールを奪うと、一気に縦パスを放り込み、快足2トップを走らせる。GK笠原の素早いロングスローも、カウンターの起点となった。
 
 この単純な攻撃は絶大な効果を発揮した。それは「汚いボール」を効果的に織り交ぜていたからだ。
 
 水戸は2トップの足下につけるのではなく、名古屋3バックの外に空いたスペースに放り込むボールを多用した。それは敵が処理しにくい、弾んだボールを狙わせる方が「トラブル」が起きる可能性が高いからだ。
 正確性で勝負するのではなく、雑にも見えるロングパスで敵を困らせる。こうして水戸は名古屋を自らの土俵に引きずり込んだ。
 
 こういう試合は、振り返れば城福元監督の甲府、反町監督の松本がJ1の強豪相手にやっていた。技術に劣るチームが頭を使って、上手いチームの足下を揺さぶる。こういう"面倒なチーム"が増えれば、Jリーグはもっと面白くなると思う。
 
 一方の名古屋は水戸のリズムに付き合わされ、最後までいい流れを呼び込むことができなかった。
 
 日照不足の荒れたピッチでショートパスをつなごうとしたため、水戸の出足に捕まり、ボールを失っては背後を突かれた。特に前半は中盤が機能せず、3トップにほとんどボールが入らなかった。自分たちのサッカーに固執したまま、時間を浪費した印象だ。
 
 ボールを持つことを前提にした名古屋のサッカーは、受け身に弱い。「汚いボール」にさらされた3バックは再三、ボールの処理にもたつき、前田の突破に置き去りにされる場面もあった。
 
 ガブリエル・シャビエルの獲得によって得点力を増した名古屋だが、守備の脆さはほとんど改善されていない。上手いけど脆いチームは、一筋縄でいかないJ2を勝ち抜くことができるだろうか。
 
取材・文:熊崎 敬(スポーツライター)
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