【番記者通信】24年ぶりの悲願へ、成熟の集団を牽引する偉大なるキャプテン|リバプール

2014年04月05日 ジェームズ・ピアース

中盤の底に配するコンバートで、輝きを取り戻す。

サンダーランド戦では、FKから直接決める鮮やかな先制ゴールをマーク。ジェラードの存在感はいまなお絶大だ。 (C) Getty Images

 3月26日のサンダーランド戦(29節順延分)。2-1でリードした終盤、相手の圧力に押される苦しい状況のなか、ひとりの声が響き渡った。

 スティーブン・ジェラードだった。最後の力を振り絞って戦いつづけるよう、キャプテンはチームメイトを鼓舞していた。終了のホイッスルが鳴ると、アンフィールド(リバプールの本拠地)の張りつめた空気はふっと緩み、ジェラードは両手を高々と掲げて勝利を祝った。

 ただ、いまのリバプールは決してジェラード頼みのチームではない。ブレンダン・ロジャース監督が、特定の個人にインスピレーションを求める必要がないと胸を張るとおり、成熟した集団になっている。事実、ジェラードやルイス・スアレス、あるいはダニエル・スターリッジといった主軸を欠いた試合でも、勝利を収めてきた。北アイルランド出身の指揮官は、個々の力をうまく融合し、スタイリッシュで素晴らしいユニットを作り上げたのだ。

 守備から攻撃まで、すべてをジェラードに任せる時代はついに終焉を迎えた。だからといって、このカリスマの価値が低下しているわけではない。いまなお、チームでもっとも代えが利かない存在だ。

 ジェラード不要説が湧き上ったのが、昨年の12月だ。キャプテンが欠場したアウェーのトッテナム戦に5-0と大勝したため、将来を見据えてベテランには身を引いてもらうべきだと、そんな声が一部に上がったのである。たしかに、スピードが衰え、攻守に圧倒的だったかつての影響力はなくなっていた。

 不要論をかき消したのは、ロジャース監督だった。中盤の底にジェラードを配するコンバートで、高精度のパスワークと展開力を最大限に引き出し、輝きを取り戻したのである。アンドレア・ピルロやシャビ・アロンソのような司令塔として、ジェラードはゲームをコントロールし、1本のパスで劇的に状況を変える。年明け以降のパフォーマンス、貢献度は抜きん出ている。ここまで11ゴール・9アシストと数字もそれを裏付ける。二桁得点は、自己最多の16ゴールを挙げた08-09シーズン以来だ。公式戦を通じた通算得点は171で、あと1ゴールでケニー・ダルグリッシュに並ぶ。

 前述のように、今シーズンのリバプールは個の力ではなく、チームの力で勝利を積み重ねてきた。だが、89-90シーズン以来、24年ぶりとなる悲願のリーグ制覇は、偉大なるキャプテン、ジェラードなしにはありえない。

【記者】
James PEARCE|Liverpool Echo
ジェームズ・ピアース/リバプール・エコー
地元紙『リバプール・エコー』の看板記者。2000年代半ばからリバプールを担当し、クラブの裏の裏まで知り尽くす。辛辣ながらフェアな論評で、歴代の監督と信頼関係を築いた。

【翻訳】
松澤浩三
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