【現地コラム】“借家”ウェンブリーでの初陣は黒星も、トッテナムがポジティブなワケ

2017年08月22日 山中忍

外野がどれだけ苦手意識を煽ろうと…。

主砲のケインが決定機を決めていれば、ウェンブリーでのホーム初戦の結果は大きく変わっていたに違いない。 (C) Getty Images

 トッテナムは、現地時間8月20日にチェルシーとのプレミアリーグ2節をウェンブリースタジアムで戦った。
 
 指揮官のマウリシオ・ポチェティーノが、観戦プログラムのコラムで「ようこそウェンブリーへ」と観衆を煽ったことからも分かるように、巷では、チェルシーとのロンドン・ダービーであること以上に、新スタジアムを建設中のトッテナムが、"借家"でこなす初のプレミアリーグでのホームゲームとして注目されていた。
 
 トッテナムのウェンブリーでの戦績は、国内カップ戦や昨シーズンの欧州カップ戦などを含めた過去10試合で2勝7敗1引分けと黒星が先行。広いピッチがプレッシング・サッカーを身上とするチームには不利という見方もあり、試合前のメディアには「呪い」や「苦悩」といった言葉が目立った。
 
 そんななかで迎えたチェルシーとの一戦が、8度目の敗戦(●1-2)に終わると、翌朝には人気大衆紙の『サン』や『ミラー』のスポーツ欄1面に、『アーチ・エネミー(最大の敵)』という見出しが躍った。スタジアムのシンボルであるアーチと、チェルシーがウェンブリーでの対決で通算4度目の勝利を挙げた相手であることにかけたものだ。
 
 しかし、外野がどれだけ苦手意識を煽っても、試合後にポチェティーノが質問を一笑に付していたように、トッテナムの惜敗の原因は「ウェンブリーだから」というものではなかった。
 
 試合前には、128年に渡って愛用してきたホワイト・ハート・レーンよりもピッチと客席の距離が遠いスタジアムで、観衆が生み出す相手チームへの威圧感が弱まる点も危惧された。無論、スタンドにはアウェー・サポーターの数も以前より増えていた。
 
 とはいえ、その数はホーム側の7万人に対して3500人程度。開始を告げる笛とともに、ホワイト・ハート・レーンの2倍近いトッテナム・ファンが応援歌『The Spurs Go Marching(スパーズの行進)』を歌い上げたホームゲームらしい雰囲気は、鳥肌ものだった。
 
 チェルシー指揮官のアントニオ・コンテは、勝利したことも相まって「最高の雰囲気だ」と、ウェンブリーでの試合を歓迎した。しかしそれは、チェルシーが幾度となくカップ戦の準決勝や決勝を戦い、ウェンブリーに対して耐性があるからだ。そうでなければ、あの会場のムードに飲まれるケースも十分に考えられた。

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