【清水】久しぶりに現われた「ギラギラして尖った」逸材。圧巻の突破力でサイドを支配する松原后は、どこまで伸びるのか

2017年08月10日 佐藤俊

ボールを持てば相手を抜きにかかり、スタジアム場内の空気を劇的に変えてくれる選手だ。

C大阪戦では2点に絡む活躍でチームを逆転勝利に導いた。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

[J1リーグ21節]清水3-2C大阪/8月9日/アイスタ

 久しぶりにギラギラして尖った選手を見た。
 
 常に飢えているなぁという感じの精悍な面構え。人を射抜くような鋭い眼光。身体全体から何かをやってくれそうな匂いをぷんぷんさせる。最近は妙に優等生でおとなしい選手が多く、ギラギラ感のある選手は絶滅危惧種になりつつあったが、清水エスパルスの左サイドバック・松原后は久しぶりに出てきた野性味あふれるプレイヤーだ。
 
「俺がこのチームを勝たせるという気持ちでやっています」
 
 サイドバックながらまるでストライカーのような意識もいい。
 
 もともと浜松開誠館高時代は2年生の途中までFWだった。叔父にはストライカーとして清水や磐田で活躍した元サッカー選手の松原良香がおり、血筋的には点取り屋。その血が松原の中に脈々と流れ、試合を決めることに魂を焦がす。
 
 実際、松原はゴールを狙い、見ているファンの腰を浮かせるようなプレーを見せる。
 
 セレッソ大阪戦では、ゴリゴリの攻撃から2ゴールに絡み、勝利に貢献した。
 
 51分に左サイド、縦から斜めに切り込むようにボックス内に侵入すると、対応に慌てた田中裕介に倒されてPKをもらった。
 
「左サイドからボックス内は俺のゾーンなんで」
 
 それは、"松原ゾーン"ともいえるもので、そのエリアでの仕掛けに絶対的な自信を持つ。
 
 73分には、左サイドから相手の意表をつくグラウンダーのクロスをマイナスに入れて、北川航也の決勝ゴールを生んだ。
 
「相手の股を狙ったけど、マイナスにいけば空くのが分かったんで」
 
 仕掛ける時は「目前の相手に絶対に負けたくない」という熱い気持ちで挑むが、猪のように突撃するのではなく、冷静に周囲を見て状況判断している。
 
 プレーでファンやサポーターから「おぁー」と大きな歓声を受ける選手が少なくなったが、松原はボールを持てば相手を抜きにかかり、スタジアム場内の空気を劇的に変えてくれる選手なのだ。
 
「もともとやれる自信はあったんですけど、今はそれを試合で出せるようになって結果につながっている。サイドバックですけど、結果にこだわり、結果を出せる選手になりたい」
 
 攻撃の意識が非常に高いが、かといって守備を軽んじているわけではない。

次ページ「同世代は意識していない」「目指すのはもっと上」。その言葉からは、負けん気の強さと深い自信が垣間見える。

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