サッカーファミリーの熱き想い~今年も大盛況だった『福島復旧・復興祈念サッカー大会』

2017年08月09日 安藤隆人

ふたりの熱き指揮官の呼びかけで、2012年からスタート。

大津(手前)と新潟明訓の一戦はハイレベルな攻防戦に。写真:安藤隆人

 8月4日から7日にかけて、福島県郡山市を中心に行なれた『第6回福島復旧・復興祈念ユースサッカー大会』。この大会は郡山市に校舎がある強豪・尚志高校サッカー部の仲村浩二監督と、帝京安積高校サッカー部の小田晃監督のふたりが中心となり、2012年に立ち上がった大会だ。
 
「2011年に東日本大震災があってから、福島県の状況は一変してしまいました。原発事故の影響で、福島県に他県の人が来なくなってしまった。僕らはここに住んでいて、もちろん放射能に対する恐怖はあった。でもこの福島でサッカーを頑張ることで、震災前のような活気のある場所にしたかった。もっと福島にいろんなところから来てもらって、サッカーを通して福島の良さを知ってもらいたい。そういう想いから、小田監督とともに始めました」(仲村監督)
 
「僕と浩二さんで話をしていて、2011年の震災後に福島に県外から誰も人が来なかった。逆にこっちが県外に行くと白い目で見られることがあった。その中で少しでも福島に来てもらって、改めて良さを感じてもらって、経済面、意識の面でも変化をさせたいという想いから、サッカーを通じて取り組もうと思って始めました」(小田監督)
 
 尚志高校の人工芝グラウンドを中心に、全国から強豪校を呼び、大会形式ではなく、いろんなチーム同士が対戦できるレギュレーションだ。
 
 今年で6回目を迎える大会には、北海道大谷室蘭、旭川実業、大船渡、聖和学園、ベガルタ仙台ユース、新潟明訓、帝京長岡、共愛学園、明秀日立、日体大柏、湘南ベルマーレU-18、三重、綾羽、京都橘、大阪桐蔭、大津、神村学園が参加。北は北海道から南は九州まで、ほぼ全地域から強豪校が集まった。ここに主催地となる尚志、帝京安積と、地元の郡山を加えた全20チームがすべてAチームで戦い、合間にはBチーム戦もやるという大規模な大会に発展した。
 
「最初は福島の今を知ってもらいたい、福島の経済界にも活気をもたらしたいというところからスタートしましたが。今は各チームに協力してもらいながら、それぞれのチームが強化の貴重な場としても受け止めてくれるようになった。本当にありがたいことです」
 
 この仲村監督の言葉通り、尚志高校グラウンドを中心とした全5会場でハイレベルな攻防が繰り広げられた。尚志VS大津、京都橘VS尚志、大津VS新潟明訓、神村学園VS大阪桐蔭、旭川実VS神村学園、湘南U-18VS北海道大谷室蘭など、普段見られないような組み合わせのゲームが目白押しで、なかでも京都橘VS尚志、大津VS新潟明訓の戦いは非常にハイレベルだった。
 
「今大会の目玉は大津高校を招待したことなんです。熊本も震災で甚大な被害を負った。福島と熊本、そして今回は、津波被害の大きかった大船渡も来てくれた。すごく意義あるものになったと思います」(小田監督)
 
 大津はインターハイこそ出場できなかったが、今季もプレミアリーグWESTを戦う強豪。CB福島隼人、MF水野雄太、大崎舜ら優秀な2年生を揃え、正確なパスワークと個の打開力を見せる質の高いサッカーを展開する。こちらも組織的なサッカーが自慢の新潟明訓との攻防戦は、見応え十分だった。京都橘もインターハイベスト8のメンバーがそのまま出場し、同じくベスト16の尚志と非常に締まったゲームを繰り広げた。
 

次ページ大会自体のレベルも高い、意義深い4日間に。

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