最後まで貫いた鈴木啓太らしさ 主役ながら周囲を輝かせた“浦和の男”の真骨頂

2017年07月18日 轡田哲朗

前半は「BRUE FRIENDS」の一員としてシュート10本を放つが、後半は一転して…。

後半から浦和の赤のユニホームを着用して登場した鈴木。この日の主役は、現役時代さながらのプレーを見せた。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 2015年シーズンで現役を引退していた"浦和レッズの"鈴木啓太の引退試合が開催された。鈴木にとっては、観衆の前でプレーをする最後の機会であり、完全なる主役のはずだった。しかし、最後の最後まで、鈴木らしく周囲を輝かせる姿が印象的だった。

 
 前半、鈴木はアテネ五輪を目指したU-22日本代表や、2006年から07年までのイビチャ・オシム監督が率いた日本代表の選手たちが中心になった「BLUE FRIENDS」の中でプレーした。浦和側の「REDS LEGENDS」は現役をすでに退いている選手がほとんどだったこともあり、青のユニホームがボールを持って攻撃を仕掛けた。その中で、鈴木は楽しそうにゴール前へと次々に飛び出した。
 
 GKと1対1になった場面で枠を外したり、ボレーシュートをはるかゴール裏まで打ち込む宇宙開発だったりと、浦和サポーターから"お約束"のブーイングを受ける場面こそあったが、中村俊輔の絶妙なパスから2点を決めた。試合後に「僕に点を取らせてくれるために、多くの忖度と言うんですか(笑)、それがあったように感じましたけど」と冗談交じりに話したが「個人的に1試合で2ゴール取ることはなかったので、非常に嬉しいですね」と喜んでいた。
 
 前半に鈴木が放ったシュートは10本。周りが主役である鈴木のためにお膳立てをする、引退試合らしい光景がそこにあった。
 
 だが後半は、ある意味でサッカーファンのよく知る鈴木の姿があった。浦和側に入った鈴木は2007年にアジア・チャンピオンズリーグを制したメンバーの中で、当時と同じくボランチでプレー。すると、ワシントンやロブソン・ポンテ、マリッチ、永井雄一郎、小野伸二、田中マルクス闘莉王といった個性の強い面々が次々にゴール前へ駆け上がっていく。鈴木は闘莉王が上がればスペースをカバーし、ボールが来ればシンプルに前線の面々にパスを渡す。
 
 後半に4点を取った赤のユニホームだが、得点者はワシントンとポンテが2点ずつ。鈴木は2アシストこそ記録したが、シュートはわずかに1本だった。誰が主役なのか、誰の引退試合なのか分からないくらいに、チームの一員としてプレーしていた。

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