【名古屋×徳島│GK物語】苦節11年、大先輩の楢崎正剛に、長谷川徹が認められた日

2017年07月09日 塚越 始(サッカーダイジェスト)

名古屋で4年間プレー。憧れの存在を前に、長谷川が神懸ったようなスーパーセーブを連発。

もちろん悔しいはずだが……。後輩である長谷川の活躍は、楢崎にとっても刺激になったはずだ。写真:サッカーダイジェスト写真部

[J2 22節] 名古屋グランパス 0-2 徳島ヴォルティス
2017年7月8日/豊田スタジアム
 
 試合終了の瞬間、豊田スタジアムのピッチ上に仰向けに倒れ込んだ。そこに、チームメイトたちが満面の笑みを浮かべて駆け寄り、続々と覆いかぶさる。
 
 徳島が昇格争いのライバル名古屋を2-0で撃破したアウェー戦。歓喜に沸く徳島の選手、スタッフ、サポーター……。その中心にいたのは、絶体絶命のシュートをことごとく防ぎ切ったGK長谷川徹だった。
 
 あらゆる形からゴールを決めてしまうストライカーがいれば、この日の長谷川は「あらゆる形でゴールを守るGK」だった。
 
 DFに当たってコースの変わったシュートに、逆を取られながらも間一髪、右手を投げ出して防ぐ。
 
 強烈なミドルには、187センチの高さを生かして、枠外へ弾き出す。
 
 至近距離からの決定的なシュートには、左手の指先で辛うじて触れてセーブ。
 
 そして、絶体絶命のPKをも止めてみせた。
 
 さらに、さらに……ポストにシュートが2本当たって救われた。ただそれもフィニッシャーとの駆け引きで、長谷川がしっかりスペースを埋めていたからだ。
 
 吉田麻也(サウサンプトン)らとの同期として、07年、名古屋U-18からトップチームに昇格した。しかし不動の守護神、楢崎正剛を前に、トップ出場はなかなか訪れなかった。結局、10年までの4シーズンで公式戦出場はわずか3度だけにとどまった。
 
 出場機会を求めて、11年に徳島へ移籍。高さと抜群のシュートへの反応の速さを生かして、J1に昇格した14年からレギュラーとして、ゴールを守り続けてきた。
 
 しかし今季、テクニックを重視するリカルド・ロドリゲス新監督の下では、開幕からベンチスタートが続いた。ただそれでも腐らず練習を続けると、これまでのサッカー人生と同様、再び這い上がり、5月21日の15節・水戸戦(△1-1)で出場機会を得る。そこから「結果」を残し、再びポジションを掴んだ。
 
 2017年7月8日、22節の名古屋戦。古巣のゴールを守るのは、あの楢崎だった。その変わらず憧れる大先輩の前で、長谷川は神懸ったようなスーパーセーブを連発。そしてチームに4連勝となる白星をもたらした。チームは自動昇格圏の2位も射程圏に捉えた。
 
 長谷川は試合後、次のようにコメントしている。
 

次ページ「比較できるような立場ではありません」と語る長谷川へ、楢崎も"メッセージ"を送る。

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