【ベガルタ戦記】渡邉晋の『日晋月歩』|チーム全体が「同じ絵」を描いて奪った理想的な得点

2017年06月27日 渡邉 晋

チーム全体で意図的にボールを動かし、運び、得点を奪った。

C大阪はリーグ随一の堅守を誇っており、普段以上に映像を確認してトレーニングと試合に臨んだ。(C) J.LEAGUE PHOTOS

 仙台の渡邉晋監督による現役指揮官コラム「日晋月歩」の第15回。テーマは「イメージの共有」だ。天皇杯2回戦で不覚を取った直後、リーグ屈指の堅守を誇るC大阪をホームに迎えた。
 
 試合は2-4で敗北したものの、奪った2ゴールは大きな意味のあるものだった。堅守を完璧に崩し切った意義とは? また、今後に向けた課題は何か。ゲームが終わってすぐ、振り返ってもらった。
 
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[J1リーグ16節]仙台 2-4 C大阪/6月25日(日)/ユアスタ
 
 6月21日の天皇杯2回戦で筑波大に2-3で負けた。それでもC大阪戦ではサポーターが大声で応援してくれた。涙が出るくらい嬉しかった。
 
「これだけサポーターが力をくれているんだから」という意気込みはチーム全体に当然あって、だからこそ勝利を届けたかったし、届けなければいけなかった。
 
 C大阪は15節終了時点でリーグ最少の12失点と堅守を誇っていた。スカウティングをしても、「本当に堅いな」という印象。だからこそ、筑波大戦から3日しか準備期間はなかったが、普段以上に映像を確認してトレーニング、試合に臨んだ。
 
 そんな相手に理想的な崩してゴールを奪えたのは、ポジティブな要素だ。攻撃面での成長をより実感できている。今季序盤はチャンス自体を作れなかったり、シュートを打てなかったりと、ただボールが回っているような状況も多かった。
 
 それが今では、どこに立ち位置を取れば相手が嫌がるのか、それをどうやって組み合わせたら相手最終ラインを破れるのか、ゴールに向かって行けるのかを全員が共有できるようになった。
 
 36分の1点目は、現時点で今季のうちのベストゴールではないだろうか。まさに"完璧"に崩した。ボールに関わっている選手が多く、しかもビルドアップを開始して左に運んだ時点で「奥埜(博亮)につければ、ヨシ(中野嘉大)のところで裏を取れる」という絵をみんなが描けていたと思う。
 
 左で攻撃を作って、相手守備網を寄せて、その間に右のシャドーに入った奥埜が空く。そこに入れて、ヨシが裏を突き、GKが出てきたところでナオ(石原直樹)が仕留める。
 
 チーム全体で意図的にボールを動かし、運び、得点を奪った。非常に価値のあるゴールだった。みんながゴールまでのビジョンを共有できていたのは大きな進歩だ。
 
 また、61分の2点目も素晴らしかった。タマ(三田啓貴)、クリス(クリスラン)、(西村)拓真の3人の関係で割と作りやすい形ではあったが、タマからクリスに楔のボールを入れる段階でどこが空いて、どこに走り込めば得点になると分かってプレーしていた。

次ページ選択肢が増えたからこそ適切かつ迅速な判断が重要になる。

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