【日本代表】伝説のゴールから11年、乾貴士が見せた野洲高時代から変わらない遊び心と創造力

2017年06月09日 塚越 始(サッカーダイジェスト)

シリア戦で繰り出した足技の数々。変わらない『何か』を起こす期待感。

2006年1月19日、全国高校選手権・決勝、野洲高の当時2年生だった乾が、鹿児島実業高を相手にドリブルで仕掛ける。写真:サッカーダイジェスト写真部

[キリンチャレンジカップ2017]日本 1-1 シリア/6月7日/東京スタジアム
 
 たちまち乾貴士の一挙手一投足に、誰もが釘付けになった。

 足に吸い付くようなトラップの瞬間に、複数のシリアの選手をたちまち置き去りにする。猛烈な勢いでボールを目がけて突っ込んでくる屈強なDFをワンタッチでいなし、その反動を推進力に変えてドリブルを仕掛ける。
 
 さらにスタンドやTVで観ている者をも騙す、背中に眼があるかのような後方への正確なパス。騙されたと思った次の瞬間には、前方のスペースを突き、フリーでパスを受ける。
 
 縦に抜ける、と見せかけての中央へのカットインも鋭かった。77分には本田圭佑からのサイドチェンジを受けると、まず縦に仕掛けて、さらにゴールラインぎりぎりを綱渡りするかのようにスルスルとダブルタッチのドリブルで、中央へ抜け出し決定機を作り出した。
 
 乾にパスが入ると、『何か』が起きそうな期待が膨らんだ。その期待に応えるように、日本の背番号11は必ずまず前を向いてドリブルを仕掛けようという"選択"をしていた。
 
 ふと思い起こしたのが、旋風を巻き起こした2006年度の全国高校サッカー選手権の野洲高だ。初優勝を果たした"セクシー&ちょい悪"軍団の攻撃を牽引したのが乾だった。とりわけ、完璧なボールコントロールと急激にピッチを上げるドリブル、そこから意表を突く背後へのパス——。決勝の鹿児島実業高戦、延長に決めた伝説のゴールにつなげた乾のテクニックが凝縮された一連のプレーは、今なお多くの人の記憶に残っていることだろう。

 あれから11年、今回のシリア戦での足技のデパートのようなプレーぶりを見ていて、当時と変わらない遊び心と創造力を感じた。大胆かつ繊細なテクニシャンぶりはそのままに、すべてがレベルアップし、加えて力強さも増し、2年ぶりとなる日本代表の檜舞台で披露してみせた。

 また高校3年時の2006年11月には、反町康治監督率いるU-21日本代表に飛び級で選出。韓国との親善試合の終盤に投入されると、短時間の中で小気味いいドリブルからチャンスを作り出していった。その大舞台で物怖じしなかった図太いメンタルも印象に残る。
  
 2007年に横浜でデビューを飾り、その後、C大阪、ボーフム、フランクフルトとステップアップをしていった。そして――15年からエイバルへ。気付けば日本よりも、海外でのプロ生活のほうが長くなっている。
 

次ページ人に言われることをやるだけでなく、まず自由に楽しく——。変わらないスタンス。

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