【日本代表|シリア戦戦評】乾貴士と本田圭佑の働きは本当に素晴らしかったのか?

2017年06月08日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

乾と本田を称賛することには少し違和感を覚える。

華麗なテクニックを披露した乾だが……。写真:田中研治

 日本の戦いぶりは予想以上に酷かった。攻撃も守備も中途半端になった原因は、おそらく中盤の構成力の低さにあっただろう。
 
 原口元気が「前から行っても守備がハマらなかった」というのは前線と中盤の距離感に問題がおそらくあったわけで、実際、日本はシリアのスピーディーな攻撃に苦しめられた時間帯があった。
 
 香川真司の負傷交代(10分)という思わぬアクシデントがあったとはいえ、前半は特に酷かった。48分に先制された後は、さすがにホームで負けられないと闘志に火が付いたように見えたが、それでも結局は1-1の引き分けである。
 
 シリアの運動量が落ちてきた後半に日本が主導権を握るのは当たり前で、乾貴士のテクニックが素晴らしかった、本田圭佑のインサイドハーフが良かったなどと称賛することには少し違和感を覚える。
 
 むしろ懸念すべきは、昨年11月のサウジアラビア戦と今年3月のUAE戦で抜群に機能していた1トップの大迫勇也が沈黙した点だ。これも、中盤との連係に原因がおそらくあるだろう。今野や山口からボールを引き出せず、たとえパスを受けてもフォローがないせいで孤立と、悪循環にハマっていたのも、中盤と適度な距離感を保てていなかったからだ。
 
 これまでは大迫の絶妙なタメからリズムを生み出していた日本。しかし、その武器を生かせずに手詰まり状態になると、シリアのカウンターを食らうようになり最終ラインはズルズルと下がり始めた。これで前線、中盤、4バックの3ブロックは完全に間延びし、空いたスペースをシリアに使われるようになってしまった。
 
 その傾向が強かったのがつまり前半で、試合をコントロールしていたのはアウェーのシリアだった。こうした流れでシリアが48分にマルデク・マルドキアンのヘッドで先制したのは、むしろ自然な流れだったと言えるだろう。

次ページ復帰したばかりの今野に多くを求めるほうが無理。

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