【総体】“大分のドルトムント”柳ヶ浦は、全国の舞台で台風の目となれるか

2017年06月06日 川端暁彦

ブレない指揮官の下で3年ぶりの戴冠。

県決勝で先制点を挙げ、歓喜を爆発させる芝崎(18番)。本大会での活躍も楽しみなルーキーFWだ。写真:安藤隆

 6月5日、インターハイ大分県予選の決勝が大分スポーツ公園にて開催され、大分工を1-0のスコアで破った柳ヶ浦が3年ぶり2度目の優勝を飾った。
 
 柳ヶ浦は大分県宇佐市に校舎を構える、県内屈指の強豪私立校だ。県内の高校サッカーに詳しい記者の言葉を借りれば、「一貫してもっともカラーがハッキリしているチーム」ということになる。
 
 前線からの激しいプレッシング、ゴールに迫るスピード感、さらにはダイナミックなワイド攻撃を志向しており、絶対的な運動量の多さで勝負するのがスタイルだ。ドイツの名門ボルシア・ドルトムントのジャージに身を包む野口健太郎監督は、「高校年代になると、ボール扱いの部分はもうそんなに変わらないと思っています」と断言し、ひとつの信念を貫いている。
 
 技術的なものは中学年代までに仕込んでおくべきもので、高校で意識するべきはフィジカル面の向上であり、戦い方の部分である。それが野口監督の考え方だ。
 
「フィジカルの要素をトレーニングの最後に入れるチームが多いと思いますが、ウチは最初に入れます。まずグラウンドまで走ります。そこから体幹トレーニングも入れて、それからボールを使っていく。疲れた中でやれるのが本当の技術ですし、それを求めます。(高校年代で)ボール扱いはそう伸びないですが、少ししか足を上げられなかった選手が(柔軟性を強化することで)グッと上がるようになります。そういう部分を大切にしています」(野口監督)
 
 練習でフィジカルの要素が多いというと、日本ではそれだけで入学を敬遠されがちだが、野口監督にブレはない。入学を希望する選手に対しては、「必ず保護者にも本人にも会って話をします」と言い、その上で「来たいヤツは来い」というスタンスだという。
 
 現在のレギュラーのひとりは宮崎から来ている選手だが、県内や鹿児島の希望校には断られたそうで、学校に電話をかけ、直談判の末に練習参加。入学に至ったそうだ。東京出身の選手もいるが、「県トレセンに入る選手とかは全然いない」と野口監督が笑うように、いわゆるエリート選手が集まってくるチームではない。
 
 もうひとつ、韓国人留学生を長く受け入れ続けているのも特色だ。野口監督が「歴代で30人くらいはいると思います」と明かす伝統。昨年もDFキム・ヒョンボムがJ3のFC琉球に加入している。今年のチームで核となるMFキム・ジュンニョンも「この子は凄いモノを持っていると思う。Jリーグを狙える」と指揮官が太鼓判を押す注目株だ。ところが、このキムが今回のインターハイ予選序盤で骨折して離脱。さらに、もうひとりの留学生であるMFジン・ソルも決勝の前半半ばで負傷交代と、アクシデントに見舞われてしまう。
 

次ページ救世主となったのは得点センス溢れるルーキーFW。

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