【CL】マドリーを覚醒させたハーフタイムでのレジェンド指揮官の「魔法の言葉」とは?

2017年06月04日 井川洋一

総合力の差、格の違いを見せた、連覇一番乗りに相応しいチーム

試合後は喜びと安堵の表情を見せていたジダン監督。昨シーズン途中からの監督就任で、2度目の欧州制覇を果たし、肩書は「レジェンド」から「名将」へ。右はベロニク夫人。 (C) Getty Images

[CL決勝]ユベントス 1-4 レアル・マドリー/6月3日/ナショナル・スタジアム(カーディフ)
 
 現在のフットボール界の横綱、レアル・マドリーが総合力の違いを示し、またひとつ歴史を塗り替えた。


 序盤、主導権を握ったのは、21年ぶりの欧州の頂点を目指すユベントスだった。試合開始前の選手紹介から逆サイドのゴール裏と明らかに声量が違うサポーターの後押しを受け、イタリアの2冠王者がキックオフからリズムを掴む。
 
 前日会見で「イタリア国民のバックアップを感じる」とジャンルイジ・ブッフォンが話していた通り、屋根が閉じられたスタジアムにはユベンティーノの熱意が満ち、選手たちはそれを力に変えていた。
 
 しかし、悪い流れからでも得点できるのが今のマドリーだ。自陣で相手の攻撃を遮断し、逆襲から左で作って右で仕上げる得意のかたちで先制に成功。その後、いったんは追いつかれたものの、後半に入ると徐々にだが完全に主導権を握り、カゼミーロのミドルで勝ち越した。
 
 このシュートは相手選手に当たったことで軌道が変わり、ブッフォンでさえ触れないコースに飛んでいったラッキーなゴールと捉えることもできる。だが、運を引き寄せられるのも強者の証だ。試合後の記者会見で、「もう少し運が必要だった」と敵将のマッシミリアーノ・アッレグリも嘆いた。
 
 決勝点は運を含んでいたものかもしれないが、その3分後に勝負を決めた3点目は、チームの地力の差によるものだと思う。リードされて浮き足立ったユベントスは自陣内でボールをカットされ、ルカ・モドリッチのクロスをクリスチアーノ・ロナウドに決められてしまったのだ。
 
 これにはアッレグリ監督も、「選手たちを称えたいが、ただひとつだけ不満があるとすれば、2失点目以降の展開だ。彼らはピッチ上で解決策を見つけるべきだった」と悔やんだ。
 
 2点差とされたユーベはどうにかして反撃の糸口を見つけたかったが、ベンチにはジョーカーとして攻撃に変化をつけられる選手がフアン・ギジェルモ・クアドラードしかおらず、そのコロンビア代表も交代出場後、イエローカードを2枚受けて退場した。
 
 一方のマドリーのベンチには、ガレス・ベイル、マルコ・アセンシオ、アルバロ・モラタと劣勢時の備えも万全。そこにも格の違いが現われていた。
 
「後半は今シーズン最高のパフォーマンスだった」とクリスチアーノ・ロナウドは振り返り、前半からの大きな改善を「ハーフタイムの(ジネディーヌ・)ジダン監督のポジティブなチームトーク」に見出した。
 
 では、そこで実際、何を話したのか。そう聞かれた指揮官は、「自分たちがやってきたことをやり続けよう。相手陣内でボールを回そう。我々はフットボールを熟知しているし、それを可能にする力も持っているのだから。そう言ったんだ」と明かした。
 
 揺るぎない自信――。それこそが、「白い巨人」が今の地位を築いた大きな要因のひとつだろう。
 
 ついにチャンピオンズ・リーグ(CL)を連覇したチームが誕生した。2000年に20世紀最高と認められ、ひとときの雌伏を経て、真のレジェンドにより再び圧倒的な力を持つようになったマドリー以外に、それに相応しいチームはないだろう。
 
現地取材・文:井川 洋一

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