【U-20】“新エース”への自覚が生んだ堂安律の輝き。頼もしき活躍の背景にあった戦友との誓い

2017年05月28日 橋本啓(サッカーダイジェスト)

『こんだけやってやるぞ』と思わすためにも…。

堂安(7番)はイタリアから2得点を奪い、決勝トーナメント進出に大きく貢献。この試合のヒーローとなった。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

[U-20ワールドカップ・グループステージ最終戦]日本 2-2 イタリア/5月27日/韓国・天安

 まさに"ワンマンショー"と言わんばかりの活躍だった。


 2点ビハインドを背負い窮地に立たされて迎えた22分、敵陣左サイドで遠藤渓太がボールを持った瞬間、堂安律はすかさずゴール前へ走りこむ。クロスボールに対し、思い切り左足を伸ばして当てたボールは、ゴールネットを揺すった。

「渓太が良いボールを蹴っているなという感じがしたから、来そうやなと思って走った。あの動きはどんどん続けていきたいですね」

 この1点で勢いづいた堂安は、独特のステップを利かしたドリブルでイタリアの守備陣を翻弄。その後も、岩崎悠人との連係で右サイドを崩しシュートまで持ち込むなど、果敢に相手ゴールへと迫る。

 そして、圧巻だったのは後半開始直後の2点目だ。

 敵陣のバイタルエリアで市丸瑞希の縦パスを受けると、ドリブルでDF4人の間を縫ってゴール前に侵入。最後は飛び出してきたGKをあざ笑うかのようにタイミングを外してシュートを流し込み、試合を振り出しに戻した。

「『こんだけやってやるぞ』と思わすためにも、厳しいところでも仕掛けにいったし、球際へも戦いに行ったから、それが結果になったんじゃないかと思います」

 チームを救う2得点を挙げ、この試合のヒーローとなった堂安のパフォーマンスには、14歳から指導してきたという内山篤監督も「自分の良さが出ていた」と賛辞を贈る。決勝トーナメント進出が懸かったこの大事な一戦で、エース級の働きを見せてしまうあたりは"らしさ"なのかもしれないが、ある決意を持って臨んでいた事実も見逃せない。

「俺が決めないとっていうのは毎試合思っていますけど、この試合は(小川)航基がいなかったんでね。点取れる選手がいなかったので。数々のピンチを救ってきたという役割を、逆に自分がしてやろうというふうに思っていました」

 チーム立ち上げ当初からともに主軸として攻撃を牽引してきたエース、小川の離脱は、堂安自身も少なからずショックを受けたに違いない。志半ばでチームから離脱するストライカーの分まで戦う――。そう胸に誓っての臨んだ末の働きでもあった。

 試合前、小川からかけられた「良いところ持っていけよ」の言葉どおりに、ハイパフォーマンスを見せつけた自らのプレーには「感動できるような試合はできたかな」と振り返る。それでもここで立ち止まらず、すでに先を見据えているのも彼なりのスタンスと言えるだろう。

「個人的には満足したら良くならないし、悪くなるので、本当にまだまだやぞって言い聞かせながらピッチに立ちたいと思います」

 ベスト16に向けて、堂安はこう続けた。

「この試合のように相手は一発で決めてくる。追い付けたから良かったですけど、もっと僅差になってくると、そこが命取りになるので、そこはもう一回詰め直さないといけない」

「俺がやらないといけない」との想いをより強くした"新エース"は、さらなる高みを狙っている。

【U-20W杯|日本 2-2 イタリア PHOTO】堂安が渾身の2ゴール!日本、3位で決勝Tへ

取材・文:橋本 啓(サッカーダイジェスト編集部)
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事