【新潟】初陣で見えた"呂比須イズム"。わずか4日間の準備で植え付けたものとは?

2017年05月22日 大中祐二

武器を最大限に生かすべくシステムを4-2-3-1に変更。

呂比須監督が強調したのは、「堅守」と「速攻」だった。(C)J.LEAGUE PHOTOS

 着任から、トレーニング期間はわずかに4日。呂比須ワグナー新監督は、「堅守」と「速攻」という攻守の肝をクリアにし、初陣となった12節・札幌戦を1-0でモノにした。
 
「5日で試合は短い。でも、ブラジルでは監督就任会見をやった翌日に試合をしたこともある。一度も練習できなかったし、選手の名前も覚えきれず、もちろん試合には負けた(笑)。それに比べれば――」
 
 就任会見で、そう話した呂比須監督は、限られた時間で、まずシステムをそれまでの4-4-2から4-2-3-1に変更。そして守備ラインを下げることで、堅守の新しい基準作りに着手した。
 
 ラインを下げるとともに、選手たちに強く求めたのが陣形のコンパクトさを保つことだ。そのために、独断でボールを奪いに行かない自制の姿勢を、前線のアタッカーたちに強く求めた。ゴーサインはGK、CBからの声を聞いてから。常に後方発信であるべきとした。ディフェンスラインと前線の距離は25~35メートルが目安だ。
 
 陣形をコンパクトに保ったところで、ただラインを下げるだけでは相手に押し込まれっぱなしになる。奪ったボールは、素早くサイド、あるいは背後に送ってスピードを生かす。1トップに鈴木武蔵、右サイドハーフにホニ、左サイドハーフに山崎亮平を配した4-2-3-1は、速さという新潟の武器を最大限引き出すために選択されたものだ。そしてトップ下でコンダクターを務めるのがチアゴ・ガリャルドである。
 
 札幌戦がキックオフされてすぐに、「堅守」と「速攻」という呂比須監督のコンセプトがビッグチャンスを引き寄せる。
 
 7分、自陣左サイドで堀米悠斗がボールを奪い、引いてきた鈴木にパス。相手に寄せられ、ハーフウェーライン手前でカットされかけるが、鈴木も粘ってチアゴ・ガリャルドにつなぐ。チアゴ・ガリャルドは素早く前方のスペースにパス。左から抜け出した山崎が持ち上がって折り返したボールを、ニアに詰めた鈴木が相手GKク・ソンユンの鼻先で合わせた。
 
 勢いよく飛んだシュートはニアのサイドネットの外、わずかにゴール左に外れたが、チームの狙いがしっかり共有されていることを感じさせるシーンだった。

次ページどん底に沈んでいた新潟の選手から、プレーする恐怖心を取り去った。

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