武藤嘉紀と同ルートでプロを目指す慶大生・松岡瑠夢が進学を希望した理由とは

2017年05月18日 竹中玲央奈

今季トップ昇格した3人にも劣らぬインパクトを放っていたFC東京U-18時代。

慶應義塾大のルーキー松岡。監督もその実力を高く評価する。写真:猪野史夏

 2016年の高校サッカーを振り返ると、選手権と高円宮杯をともに初制覇した青森山田の年だった。一方、Jクラブのユースチームに視点を変えてみるならば、日本クラブユース選手権とJユースカップの二冠を達成したFC東京U-18の年だったのは間違いない。
 
 飛び級でU-20日本代表にも招集された久保建英の存在もあって注目を集めたこのチームからは、GK波多野豪、DF岡崎慎、MF鈴木喜丈、MF内田宅哉のトップ昇格が発表され、2017シーズンよりプロの舞台で戦っている。ただ、筆者個人の視点で言うならば、最もインパクトを残してくれた選手はトップ昇格した4人以外にいる。
 
 それが今年、慶應義塾大ソッカー部に入部した松岡瑠夢だ。FC東京U-18で10番を背負った左利きのゲームメーカーは、卓越したボールタッチや判断力、そしてゴールへ向かう姿勢と柔らかなタッチで観る者を魅了した。さらに彼を強く印象づけたのが昨年の12月頭に行なわれたU-19フットサル日本代表候補の名古屋合宿に選ばれたことだ。本人も「なんで呼ばれたのか分からない」と語り、文字通りの"サプライズ選出"だったのだ。
 
 ちなみに先日、U-20アジア・フットサル選手権が開幕しており、松岡はこのメンバーに入った可能性もある。だが、後述する怪我の影響によりそれは叶わなかった。
 
 FC東京へのトップ昇格が見送られたことについては、いろんな意味で驚きと違和感を覚えたのだが、本人に聞いてみるとその理由も明らかになった。
「小さい頃から(慶應に)通っていたので、そこはチームと相談もしたなかで難しかったところもあって。家族的には大学にも行ってもらいたいというのがあったし、自分としてもずっと慶應だったので大学には行きたいと思っていました」
 
 明言は避けたが、昇格できる可能性はあったのかもしれない。ただ、将来を見据えていくなかで「焦らないほうが良いと思うので。しっかり成熟してから(プロに)行きたい」と考えた本人の意図が尊重されたのだと推察する。
 
 そして、FC東京のスタッフからは「4年目でプロになれるように頑張ってこい」と背中を押されたと語る。
 
 こうした話を聞けば、現在ブンデスリーガのマインツで活躍する武藤嘉紀が歩んでいる道と、重なって見える。
 
 武藤も慶應の付属校に通っており、トップ昇格を打診された中で「トップに上がってこれからサッカーで生きていくってなった時に『本当に自分はできるのか?』と不安になった」ことを理由に大学進学を選んでいるのは有名な話だ。4年目でのプロ入りを松岡に期待するFC東京側の思いも、この前例があってのことだろう。

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