2866日で達した大きな高み――CL出場権を獲得した奇跡の昇格組、ライプツィヒの流儀とは?

2017年05月12日 中野吉之伴

定期的に国際舞台で戦い、バイエルンのような常勝軍団へ――

最後まで息切れすることなく、常勝バイエルンに次ぐ順位を維持し続けた驚異の新興チーム。ドイツで旋風を巻き起こしたライプツィヒは来シーズン、欧州の舞台でも驚きを生み出せるか、非常に楽しみだ。 (C) Getty Images

 2009年に「RBライプツィヒ」として5部リーグから新しくスタートしたクラブが、わずか2866日でチャンピオンズ・リーグ(CL)まで辿り着いた。
 
 ブンデスリーガ第32節のヘルタ・ベルリン戦(アウェー)で4-1と快勝したライプツィヒは、3位以内を確定させただけではなく、1997-98シーズンのカイザースラウテルン以来、史上2番目のクラブとして、昇格1年目にCL出場を決めたのだ。
 
 また、このヘルタ戦の勝利はライプツィヒにとってシーズン20勝目であり、昇格チームとしては最多記録となった。
 
 ヨーロッパリーグ出場権を狙うヘルタにとっても負けられない試合だっただけに、ベルリンのオリンピア・シュタディオンには62301人の大観衆が詰め掛けていた。
 
 2-0とリードを許しながら、終盤に1点差に詰め寄られたライプツィヒは、ファンの大きな声援に後押したされたヘルタの猛攻を受けたが、89分に試合を決定付けるゴールを決める。
 
 エミル・フォシュベリからのパスで抜け出した途中出場のデイビー・ゼルケがそのままドリブルで持ち込み、右足でフィニッシュ! 貴重な得点に、ライプツィヒの全選手と監督スタッフが、スタンドのファンの元へと走り、感情を爆発させた。
 
 試合後、控え室ではシャンパンやビールで最初の祝杯。監督のラルフ・ハーゼンヒュットルは急きょ、本来なら日曜日に行なわれるはずのクールダウン用の練習をキャンセルとし、水曜日の午後まで選手に休みを与えた。
 
 普段は比較的すぐに始まる監督記者会見も、この日は試合終了から45分が過ぎても始まらなかった。ようやく会場に姿を現わしたハーゼンヒュットル監督は、充実感の溢れる表情で語り出した。
 
「大きな夢を達成することができた。今シーズン、自分たちが成し遂げたことは本当に素晴らしい。チームはもの凄いスピードで吸収していった。今日、ここで最後の一歩にしたかった。試合前には、選手を熱くモティベートした」
 
「試合開始から相手にプレッシャーをかけて、ゴールを重ねることができた。2-0とした後、ホームのヘルタは反撃に出て、こちらも少し押し込まれてしまった。だが、3-1としたゼルケのゴールが、全てを開放してくれた」
 
「もちろん、控室の雰囲気はとても良い。チームはこのために、もの凄い労力を費やし、取り組んできた。プレッシャーは大きかった。求めていた成功を手にした時には、みんなで賑やかに祝わないと!」
 
「水曜日までは、誰とも練習場で顔を合わせたくないね(笑)」
 
 センセーショナルなことをやり遂げた。だが、クラブが追い求める夢に終わりはない。目標とすべきは、バイエルンのような常勝軍団だ。
 
 以前、代表取締役のオリバー・ミンツラフは、「我々はベストクラブへ向かって舵を取る」と話し、「今後、5~10年のあいだで定期的にインターナショナルな舞台で戦い、ドイツ王者になりたい」と、自分たちのさらなる野望を口にしていた。

次ページ金の力で伝統を汚したと責められるが、大物補強の予定はない

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