「満たされている奴なんていない」ガスコインが告白するプレミアリーガーの精神的な病

2017年05月11日 サッカーダイジェストWeb編集部

レノンの一件を受けてガスコインが明かしたリアルな実情。

昨年には裁判沙汰も起こしたガスコイン(中央)。今は懸命にリハビリに努めているという。 (C) REUTERS/AFLO

 エバートンに所属する元イングランド代表MFのアーロン・レノンが、精神疾患によって警察に保護されて病院に搬送されたという4月下旬のニュースは、衝撃をもって英国を中心に報道された。
 
 このニュースを受けて元マンチェスター・Uのライアン・ギグスは「本当に試合を楽しんだことはなかった」と告白。プレミアリーグはもちろん欧州トップレベルのクラブには、毎週末に多くの目が向けられるため、その過度なプレッシャーに耐えかね、精神が崩壊してキャリアを棒に振る選手も少なくない。
 
「満たされている奴なんていない」と語るのは、元イングランド代表のポール・ガスコインだ。英紙『テレグラフ』の取材に応えている。
 
 1985年にニューカッスルでデビューを飾って以降、イングランドを代表するスーパースターとなったガスコイン。しかし、キャリアの晩年に入り、薬物中毒やアルコール依存症であることが判明する。引退後は一時、うつ病を患い精神病院に入院していたことが発覚し、大きな話題をさらった。昨年12月には、ホテルで泥酔した末に客と騒動となり、階段から転げ落ちて頭蓋骨を骨折する重傷を負ってもいた。
 
 現在は、自宅で懸命な治療に励んでいるというガスコインは、レノンの話を聞き、「全てを持っている人々がたくさんいる世界だが、満たされている奴は誰もいない」と、プレミアリーガーの精神的負担が大きいことを明かした。
 
 また、ガスコインは、「みんな『誰も自分を好きじゃなくなってしまうから、それをやってはいけない』と考えるようになって、臆病になっていくんだ」と、精神的に追い詰められていくことの恐怖も語っている。
 
 実際にPFA(イングランドのプロサッカー選手協会)は、過去18か月の間に178人の選手がカウンセリング・サービスを受けていることを明らかにしている。
 
 こうした実情を踏まえて、今月27日に50歳となる元イングランド代表MFは、PFAの上層部が機能していないとコメント。そして「時として自我が暴れ、押し潰されそうになる。そういう時は誰かと話すことが前を向く術なんだ」とサポート体制の強化を望んだ。
 
 自身の経験をもとにプレミアリーガーのリアルな実情を明かしたガスコイン。状況改善の役に立つことを祈りたい。
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