「あいつ変わったなって思われたい」遅咲きのプラチナ世代・堀米勇輝が示した開花の予感

2017年05月01日 橋本啓(サッカーダイジェスト)

09年のU-17W杯に出場。飛躍への期待が膨らんだが…。

プラチナ世代で甲府ユース出身。クラブの「至宝」として期待されてきた堀米。ただ、ここまでの道のりは平たんではなかった。写真:サッカーダイジェスト

[J1リーグ9節]神戸0-1甲府/4月30日/ノエスタ

 甲府に今季アウェー戦での初勝利をもたらしたのは、下部組織出身のテクニシャンだった。

 38分、敵陣左サイドでボールを受けた田中佑昌からのクロスに、堀米勇輝が頭で合わせたシュートがゴールへと吸い込まれる。前半終盤に奪ったこの虎の子の1点が、決勝点となったのだ。

 本人が「(ゴールの軌道は)見えていないです。とりあえず、当てることだけを考えて。(河本)明人君に『入ったよ』って言われて初めて分かりました」と振り返ったゴールは、記念すべきJ1初得点。2011年シーズンにJ1デビューしてから、約6年間待ち望んだゴールだった。

 ここまでの道のりは決して平坦ではなかった。甲府U-15時代からその才能を高く評価され、92年生まれの「プラチナ世代」として、宇佐美貴史(アウクスブルク)や柴崎岳(テネリフェ)らとともに、09年のU-17ワールドカップに出場。飛躍への期待が膨らんだが、トップチーム昇格後はその期待に反して伸び悩んだ。

 12年シーズンは、J2で21試合・1得点の成績を残すも、翌年はJ1で出場機会を掴めず、シーズン途中で熊本への期限付き移籍を決断。13年シーズンは愛媛で武者修行し、実戦感覚を磨いた。それでも、満を持して甲府へ帰還した15年シーズンは12試合の出場に止まるなど、その才能が花開くことはなかった。

 その後一度は京都へ完全移籍したが、吉田達磨監督のラブコールに応え、今季再び古巣に舞い戻ると、開幕戦(対G大阪)を除いた7試合でスタメンに名を連ねてきた。前節のC大阪戦は「不甲斐なかった」(堀米)が、「とにかくボールに触ることを意識して、あとは全然楽しめていなかったので、楽しむことを考えた」この試合でようやく結果を手にした。

 技巧派の「至宝」と謳われるだけあって、ヘディングでのゴールは「想像していなかったです(笑)」と言う。それは本人だけでなく、堀米を知る者であればおそらく、誰もがそう感じたはずだろう。抜群の精度を誇る左足でのゴールをイメージしていたとすれば、なんとも意外な形だったが、ゴールを奪った事実に変わりはない。

 ただ、堀米はこうも語る。

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