降格圏に沈む広島で今頼れる男は誰? 『カッシー救世主論』

2017年05月05日 小田智史(サッカーダイジェスト)

「“自分”が決めるというつもりでやっているけど……。僕を含めて力がないということ」

パスワークからの連動した崩しが機能不全の今、切れ味鋭いドリブル突破を誇る柏は唯一「計算が立つ存在」だ。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 広島が不振に喘いでいる。
 
 開幕から9試合を終えて、1勝2分6敗で16位。まだ序盤戦とはいえ、「降格」の二文字がちらつく忌々しき事態だ。過去5年で3度の優勝を果たしているチームゆえ、驚きはいっそう大きい。
 
 課題はやはり、リーグワースト2位に低迷する得点力に尽きる。新エースの工藤壮人がチームトップの3ゴールを挙げているものの、まだその能力を生かし切れているとは言いがたく、期待された新助っ人のフェリペ・シウバも8節の大宮戦からスタメン落ち。完封負けはすでに5度を数えるなど、決定力不足は深刻だ。
 
 そんななか、チャンスのほとんどを作り出しているのが左ウイングバックの柏好文だ。9節のFC東京戦でも、ドリブル突破から鋭いクロスで工藤のヘディングシュートをお膳立てしたシーンをはじめ、徳永悠平や河野広貴のマークをかいくぐって懸命に攻撃を牽引。パスワークからの連動した崩しが機能不全のチーム状況にあって、唯一「計算が立つ存在」と言っていい。
 
 開幕戦で右ハムストリングス筋を傷めて戦線離脱した際、柏は森保体制初の4連敗と苦しむチームを外から見て、「勝つために自分は何をできるか」を繰り返し考え、「チームを勝利に導くプレー」を自分に課したという。だからこそ、復帰後もルヴァンカップの1勝のみ(公式戦1勝1分4敗)にとどまっている現状に悔しさを滲ませる。
 
「"誰か"じゃなくて、"自分"が決めるというつもりでやっているけど……。勝つチーム、上に行けるチームは、どれだけ内容が悪い試合でも勝ち切れるし、この世界は結果がすべてだと思うので、僕を含めて力がないということ。身体は良い状態にある分、そのエネルギーをチームに還元して、ゴールをこじ開ける突破口になりたい」

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