【鳥栖】誰もが欺かれたFW起用。イタリア人指揮官の鋭い眼力が導いた決勝弾

2017年04月23日 荒木英喜

神戸戦2日前のトレーニングで先発組にチョ・ドンゴンの姿はなかった。

周囲の予想を裏切る采配で鳥栖を勝利に導いたフィッカデンティ監督。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 4月20日、鳥栖は2日後の8節・神戸戦に向けて、フォーメーションの確認を行なっていた。その時、豊田陽平の相棒となる2トップの一角に入っていたのは、鳥栖U-18から今季昇格したばかりの田川亨介だった。
 
 6節・新潟戦で途中出場すると、鎌田大地のスルーパスに抜け出し、相手CBと競り合いながらプロ入り初ゴールを決めた。4月17日・18日に行なわれたU -20日本代表候補トレーニングキャンプにも参加していた田川は、チームでいま最も勢いのある若手だ。その勢いを借りて、前節・磐田戦(1-2)での悪夢とも言える逆転負けを払拭しようという考えがあったのかもしれない。
 
 この日の練習後、田川は前述の代表キャンプを振り返り、「得意のドリブルからシュートまで持って行けたり、相手の背後に抜け出すところもけっこうあった。でも、自分では全然満足できないし、悔しい合宿にはなりました」と話した。そして、来月開催されるU-20ワールドカップの代表選出に向けて、「もう代表合宿はないので、チームでどれだけ結果を出せるかになって来る。チームだけに集中してやっていきます」と力強く語っていた。

 しかし、神戸戦で2トップの一角に起用されたのは、誰も予想しなかったチョ・ドンゴン。5節のFC東京戦では、敗色濃厚なアディショナルタイムに劇的な同点弾でチームを救った。しかし、続く新潟戦はベンチを温め、前節も3分しかプレーできなかった。そんな彼がホーム初ゴールでチームを勝利に導いた。

「とにかく黙々といつでも行ける準備をし続けるだけでした。しっかり準備して入れば、チャンスはいずれ来ると思っていましたし、来た時にそれを掴むことが大事です」

 この言葉どおり、やっと巡ってきたリーグ戦初先発のチャンスを生かしたのだ。マッシモ・フィッカデンティ監督の、選手の状態を見抜く眼と決断力も彼にとって追い風となった。

「すごく良い状態でトレーニングを続けているなっていうのがはっきりと見えていたので、監督としてはそういう選手を使わないといけない。(監督である私が)そういう状況に追い込まれるほど状態が良いと思いました」

 試合後の会見でフィッカデンティ監督はリーグ戦初先発となったチョ・ドンゴンと小川佳純の起用について、そう語っている。

次ページ激化するFWのポジション争いが指揮官に多くの選択肢をもたらす。

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