権田に伸し掛かった、想像を絶するプレッシャー。味スタは“複雑な場所”だった

2017年04月03日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

味スタは“あのアクシデント”に見舞われたスタジアムでもある。

15年7月29日の仙台戦以来、味スタのピッチに立った権田。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

【J1リーグ5節】FC東京 3-3 鳥栖/4月1日/味スタ
 
 権田にとって、味の素スタジアムは"複雑な場所"である。「このスタジアムで育ててもらった」半面、"あのアクシデント"に見舞われたスタジアムでもあるからだ。実際、4月1日のFC東京戦後、本人はこんな話をしている。
 
「人生で一番、辛いというか、不思議な……。最後、味スタで試合をやってダメになっちゃって。それ以来だったし、ここで試合やるのは」
 
 権田がFC東京の一員として最後にピッチに立ったのは2015年7月29日の仙台戦だった。実を言えば、この日、彼はミックスゾーンに現われなかった。スタッフのひとりに「権田選手はミックスゾーンに来ないのですか」と尋ねても曖昧な回答で切り返され、その場では正確な状況を把握できなかった。
 
 すると、8月5日にFC東京からこんな発表があった。チームドクターの診察を受けた権田がオーバートレーニング症候群と診断された、と。ちなみに、オーバートレーニング症候群とはスポーツなどで生じた生理的な疲労が十分に回復しないまま積み重なって引き起こされる慢性疲労状態をいう。
 
 それを踏まえて先のコメントの一部を分かりやすくすると、次のようになる。「味スタで最後試合をやってオーバートレーニング症候群になっちゃって。ここで試合をやるのはそれ以来だった」。
 
 2年前、7月29日の仙台戦でFC東京を率いていたのはフィッカデンティ監督だったのだ。オーバートレーニングに見舞われた時のシチュエーションとあまりにも似ていたからだろう。権田は「一昨年の夏も監督はマッシモ(フィッカデンティ。現鳥栖の監督)だったので、監督の顔を見た時に糸が切れたというか力が抜けちゃって」とも言っている。
 
 移籍騒動(FC東京との契約解除を経て鳥栖への移籍)で失望させたFC東京のサポーターにこれまでの感謝の意を示す以外に、"2年前の悪夢"とも戦わなければいけなかった権田。試合が終わっても「頭の中は整理されていない」という彼の言葉から察すると、今回の一戦がどれだけ重いものだったかが分かる。
 
「ちょっと真面目すぎるから、オーバートレーニング症候群になるし、ひとりで勝手に考えすぎるから背負い込みすぎる。できれば、メディア対応は明日が良かったですね。正直、頭の中も整理されてない。まあ、明日は休みなので家族とゆっくり過ごして、明後日の練習から頑張りたいと思います」
 
 想像を絶するプレッシャーを受けて臨んだFC東京では満足の行くパフォーマンスを披露できなかったが、権田はこれからも自分を信じて前に進む。

取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)

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