「パスサッカーとか言う段階ではない」。高倉監督が語ったなでしこジャパンの現在地

2017年03月30日 多田哲平(サッカーダイジェスト)

「危機感を持って帰ってきました」(高倉監督)。

高倉監督はアルガルベカップの結果に「残念に感じている」と嘆いた。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 日本女子代表が3月30日、キリンチャレンジカップ2017~熊本地震復興支援マッチ がんばるばい熊本~のコスタリカ女子代表との試合(4月9日開催)に臨むメンバー発表を行なった。
 
 会見に応じた高倉麻子監督は、3月1日から3月8日にかけて開催されたアルガルベカップを振り返り、「4試合やって2勝2敗、結果は6位。新しい選手がたくさんいるなかで選手の可能性を探りながら、さまざまなポジションや、組み合わせを試したが、なかなか私が想像したようなゲーム展開にはならずに、結果としては非常に残念に感じている」と胸中を語った。
 
 高倉体制が発足してから初の公式大会となったアルガルベカップでは、組織の稚拙さを露呈。攻めては、サポートが遅く各々が孤立気味で自慢のパスサッカーは鳴りを潜め、守っては、全体の連動性を欠いたほか些細なミスから失点するシーンが散見された。
 
 高倉監督は、「まず守備のところで約束事を決めていたんですけど、連動の部分でまだ足りない。オフ明けということもあって、0コンマ何秒かもしれないですけど、そういったちょっとずつの甘さが出て、やられてしまっているシーンが多かった。シーズンも始まったのでもう一度しっかり確認をしていきたい」とディフェンス面の改善点を挙げた。
 
 さらに「強化していきたいところは、攻撃にかかった時。切り替えのスピードと、サポートの立ち位置、身体の向き、ファーストタッチ。日本は『技術的に高い』と世界では言われていますけど、非常に甘さがあって、相手のプレスがちょっと速くなると技術もブレているし、サポートも非常に遅い。選手がそのへんの危機感を持ってやっていかないと。パスサッカーとか言う段階ではない」と語気を強め、オフェンス面の課題も口にする。
 
「アルガルベで戦ってきて、日本の現在地、まだまだこのままでは勝てないという危機感を選手、スタッフともに持って帰ってきました。この熊本の試合が次の5試合目という感覚を持ちながら、また引き続きチャレンジする」
 
 2011年にはワールドカップで世界一に輝き、2012年にはロンドン五輪で準優勝するなど数々の栄光を手にしてきたなでしこジャパンだが、昨年のリオ五輪予選敗退が示すように、いまやアジアにおいても絶対的な力はない。近年は世界各国が女子サッカーに力を入れており、迫られているどころか、追い抜かれた感さえあるのだ。

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