【コラム】プレミアの「空飛ぶ抗議」はもはや茶番? 解任要求のヴェンゲルも気に留めず

2017年03月21日 山中忍

「空飛ぶ横断幕」は今や恒例行事のようになり……。

プレミアではもはや当たり前の光景となったセスナ機を利用したファンの抗議活動。現地メディアでは大々的に扱われることも少ない。 (C) Getty Images

 3月18日のウェスト・ブロムウィッチ・アルビオン戦で、アーセナルのファンたちはアーセン・ヴェンゲル監督への退任要求メッセージを敵地上空に飛ばした。横断幕を引くセスナのレンタル費用は最低でも1000ポンド前後(約14万円)と安くはないが、彼らが利用したワンクリックのオンライン寄付によって、あまり懐が痛む感覚を伴わないのかもしれない。
 
「空飛ぶ横断幕」によるファンの抗議は、今や年中行事のようになった。エバートンでは昨シーズンまで2年連続、3年前にはマンチェスター・Uでも抗議の横断幕がオールド・トラフォード上空を飛んだ。
 
 そのためか、もはや効果の程は疑わしいものがある。セスナ機の利用が珍しかった頃には、確かにインパクトがあった。2011年のブラックバーン・ファンたちによる抗議がその類だ。
 
 当時のスティーブ・キーン監督更迭を求める垂れ幕やプラカードのスタジアムへの持ち込みがクラブに禁じられていたチェルシー戦で、「STEVE KEAN OUT」と書かれた横断幕がイーウッド・パークの上を飛んだ際には、場外プロテストの他に"上空プロテスト"という手段もあったかと、妙に感心したことを覚えている。
 
 だが、下部リーグでも同様の事例が見られる今日では、インパクトに欠けるどころか、仲間内でさえ「悪趣味」、「恥さらし」、「無駄遣い」などと非難される風潮が強まってさえいる。
 
 例えば、当時のデイビッド・モイーズ監督の解任を求めるマンチェスター・Uのファンが飛ばした横断幕は、「Wrong One(誤りし者)」と書かれた文句こそキャッチーに思えたが、ホームの観衆からは上空へのブーイングが起こり、同時にモイーズに向けて支援の拍手が送られた。

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