自分が生きる形を再認識した岡崎慎司。監督交代からの2試合で「こうやって優勝したんだと思い出せた」

2017年03月15日 寺野典子

「プレッシャーをかけると相手は余裕を持てなくなっていたのが手に取るように分かった」

監督交代によってチームとともに息を吹き返した感のある岡崎。果たして準々決勝の対戦相手は? (C) Getty Images

 チャンピオンズ・リーグ(以下CL)のラウンド・オブ16。2月22日に行なわれたセビージャとのファーストレグを1-2の敗戦で終えたレスターは、クラウディオ・ラニエリ監督の解任を決定した。昨季プレミアリーグ優勝の奇跡を起こした指揮官だったが、今季はわずか5勝しかできず、チームは残留争いを余儀なくされていた。
 
 主軸のエヌゴロ・カンテのチェルシー移籍は痛手だったが、それ以外の優勝メンバーはほぼ残留し、アタッカーの補強にも成功したものの、昨季見せたような前線から執拗にボールホルダーを追い回すハードワークができないチームになってしまった。
 
 昨季、チームにとって、ダイナモ的な存在として活躍した岡崎慎司は、出場機会を失っていた。
 
 ラニエリの後を受けた暫定監督(その後監督に就任)のクレイグ・シェイクスピアは、自身が指揮を執る初めての試合となったリバプール戦で、岡崎を先発起用。昨季のスタイルへの回帰をチームに促した。そのリバプール戦で勝利すると、残留争いのライバルでもあるハルを撃破。2連勝の勢いを維持したまま、ホームにセビージャを迎えた。岡崎は公式戦3戦連続の先発となった。
 
「最近のセビージャの試合を見ていたら、チャンスはあるんじゃないかなと思っていた。乾とはよく話をしているんですけど、『セビージャならいける!』みたいに言ってくれた。巧いけど、プレッシャーをかければ慌てる部分があると。実際、自分がプレッシャーをかけると、相手が余裕を持てなくなっていたのが、手に取るように分かった」と岡崎が振り返る。その言葉通り、レスターの選手が寄せるだけで、セビージャはボールを下げた。パスミスが誘発され、面白いようにレスターがボールを奪う。
 
 0-0でも勝ち上がれる状況のセビージャと、自分たちの形を取り戻し、自信に漲るレスターとではその勢いに大きな差があった。27分、FKからモーガンのゴールでレスターが先制。レスターの1点リードで前半が終了した。
 
 ロッカーへ引き上げる岡崎のシャツは、身体に張り付くほどに濡れていた。それだけ大量の汗をかいたということだ。
 
 54分にマーク・オルブライトンが追加点を決め、2-0としたところで、64分、岡崎はイスラム・スリマニと交代して、ピッチを後にした。その後、セビージャのサミル・ナスリが2枚目のイエローカードを受けて74分に退場。キャスパー・シュマイケルのPKセーブを含め、押し込まれた状況をただただ実直に撥ね返したレスターは、昨季見せた逞しさを漂わせる戦いぶりで、2-0で勝利を収めベスト8進出を決めた。

次ページ「本当はここでゴールを決めてヒーローになりたかった」。その想いは次戦へ持ち越しに。

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事