【日本代表】本田を外すのは危険な賭けというより、現実的な選択肢だ

2017年03月14日 熊崎敬

時差をまたぐ中での連戦では、フルタイムもたないだろう。

調子を重視する監督が矛盾した起用を続けていれば、その言葉は信用を失ないかねない。(C)SOCCER DIGEST

 3月23日のUAE戦、28日のタイ戦の日本代表メンバーが16日に発表される。特にホームで敗れたUAEとのアウェーゲームは、文字通り負けられない一戦だ。
 
 今回のメンバー発表でもっとも注目されるのは、本田が招集されるかということ。
 
 ミランでのリーグ戦出場がわずか5試合。それも先発は1試合だけで、95分しかピッチに立っていない。厳しい表現をすれば、いないに等しい選手となっている。
 
 本田は日本にとって外せない存在だった。
 日本のパスはほとんどが本田を経由することで、攻撃にリズムが生まれた。だが、それも過去形になりつつある。ハリルホジッチ体制になり、徐々に影響力は衰えてきた。ポジションはトップ下から右サイドになり、本田に合わせて周りが一斉に動くようなシーンは減った。
 
 時代は確実に変わりつつある。
 昨年11月11日のオマーン戦では、親善試合ながら中盤を完全に仕切った清武弘嗣が勝利を演出し、その流れはサウジアラビア戦も続いた。本田と香川が先発を外れたこの試合では清武が創り、原口元気が運んで、大迫勇也が収めるという形で貴重な勝利を挙げた。
 
 影響力が低下し、所属クラブで出番のない本田を、ハリルホジッチ監督は招集するのか。
 
 本田は日本で数少ない、強さを備えたプレイヤーだ。厳しい時に前線で踏みとどまり、ひとりで時間を創り出すことができる。だが現状では、かつてのようなプレーは望めない。時差をまたぐ中での連戦では、フルタイムもたないだろう。
 
 また、今の日本では大迫、原口に加えて久保といった新世代が台頭。中盤ではベテラン長谷部の充実も心強い。Jリーグでも経験豊かな中村憲が健在ぶりを見せている。
 
 2連勝したオマーン戦、サウジアラビア戦の流れを考えれば、本田を外すことは危険な賭けというより、現実的な選択肢だ。
 
「所属クラブで出番のない選手は、出られるクラブに移るべきだ」というメッセージを再三発してきたハリルホジッチ監督にしてみれば、今が決断の時だろう。調子を重視する監督が矛盾した起用を続けていれば、その言葉は信用を失ないかねない。
 
 敵地でのUAE戦は本田がいてもいなくても、難しい一戦になる。ならば、いつまでもカリスマの神通力に頼るのではなく、今躍動している選手たちがどれだけ戦えるかを見たいと思う。それは監督の手腕がシビアに試されるということでもある。
 
文:熊崎敬(スポーツライター)
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