【仙台】敢えて逆の態度を取れ。蜂須賀孝治は“特別な日”の敗戦にも俯かずに前進する

2017年03月13日 古田土恵介(サッカーダイジェスト)

「やっぱり特別で、いろいろと考えさせられる日」

58分に菅井と交代で出場した蜂須賀(写真左)。対峙した橋本とバチバチのバトルを繰り広げた。(C) J.LEAGUE PHOTOS

[J1リーグ3節]仙台 0-2 神戸/3月11日(土)/ユアスタ
 
 思い返せば、2011年は仙台大の学生だった。蜂須賀孝治にとって、「プロは夢のまた夢」。12年に特別指定で登録され、13年に入団したが、怪我もあり、思うような活躍はできていない。完全燃焼と胸を張って言えるシーズンは皆無だろう。
 
 今季もベンチを温める日々が続いている。この試合もそうだった。だが、いささか早く出番は回ってきた。電光掲示板に「4」が表示され、58分にピッチに立った。指揮官が動いたのは、後半開始早々の46分から51分の5分間で2失点したことも関係しているはずだ。
 
 試合は誰もが口を揃えて「特別な日」と表現する3月11日だったことも大きかったかもしれない。「ベンチから試合を見守っていて、みんな少し動きが硬いなと感じていた」と蜂須賀は言う。
 
 そうして、「途中出場するなら、キンさん(菅井直樹)が入っていた右ウイングバックのはず」と心の準備を整え、戦況を見守っていた男は「被災地に勇気を届けたい」と全力で駆け出した。
 
「2点ビハインドで攻めるしかなく、渡邉(晋)監督からは『ボールを受けたら、対面の橋本(和)と勝負しろ』と指示されていた。失敗を恐れる状況でもない。プレッシャーはあまりなかったし、ガンガン行こうと。とにかく相手に向かって行って、最終ラインとGKの間にクロスを送れたらと思っていた」
 
 実際、背番号4は積極果敢に単独で仕掛け、クロスを供給した。フォローに来る仲間とのコンビネーションで突破するシーンも見られた。だが、ゴールシーンを演出するには至らなかった。しかし、くよくよする暇などない。
 
「まだ工夫が足りない。何回も突っ掛けて、クロスを上げるなかで、相手もバカじゃないから上手く対応してきた。それを惑わす動きが必要だった。まだ3戦を終えただけだし、この負けをどう生かすかが重要になる。
 
 負けた時にこそ勝ったように振る舞って雰囲気を良くするべきだし、勝った時にこそ負けた時のように自分たちで気を引き締めるべき。そういう逆に考える精神が必要だと思う」
 
 ドリブル突破で相手をかわすように、敢えて逆を行く――。「結果がすべてなんで」と言い切れるほどに6年間で成長したタフな選手の姿が、そこにはあった。
 
取材・文:古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)
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