叩き上げのスペイン人指揮官に「J2のレベルと特徴」について訊いてみた

2017年03月12日 川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

東京Vは指導キャリアで13番目のチーム。

東京Vに新風を吹き込むロティーナ監督。フットボールの酸いも甘いも知る指揮官は「J2」をどう見ているのか。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

[J2リーグ3節]東京V 4-0 水戸/3月11日/味スタ
 
 俄然勢いづく快勝劇だ。
 
 J2・3節の水戸ホーリーホック戦、東京ヴェルディは4-0の大勝でアウェーチームを圧倒した。中盤での激しい潰し合いとロングボールの応酬が続くなか、34分にMF高木善朗が、弟・大輔の得たPKを冷静に決めて先制。水戸が10人となった後半にゴールラッシュを決め込み、開幕2試合で湿りがちだったアタッカー陣が本領を発揮した。
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「まだまだ課題が少なくない。後半は立ち上がりから相手の勢いに押され、危ういピンチもあった。少し冷えた状態で入ってしまったからだ。水戸が10人になってからはいいプレーができたが、もっと攻撃面やポゼッションの改善を図らなければならない。これからも毎日毎日、チームとして積み重ねていくだけだよ」
 
 そう謙虚に語るのは、スペイン人のミゲル・アンヘル・ロティーナ監督だ。
 
 リーガ・エスパニョーラでは主に中堅・下位のクラブを率い、規律を重んじたソリッドなサッカーをチームに浸透させ、一定の評価を得た。スペイン、キプロス、カタールでの指導キャリアを経て、今冬に初めて日本の地を踏んだ。東京Vは、監督として率いる13番目のチームである。
 
 その歩みは波乱万丈だ。象徴的だったのが、セルタで指揮を執った2003-04シーズン。チャンピオンズ・リーグでベスト16に導く快挙を成し遂げながら、国内リーグでは不振に喘ぎ、シーズン終了を待たずに更迭された(セルタは降格)。チームを率いた期間は大半が1~2シーズンで、デポルティボでの4年間(07~11年)がこれまでのキャリアにおける最長政権だ。
 
 だからだろう。プロフットボール界の酸いも甘いも知る59歳の智将は、どんな質問にも理路整然と答えるが、つねに慎重に言葉を選ぶ。試合結果に一喜一憂することもない。
 
 はたして、厳格な新監督と既存の主力メンバーはシンクロできるのか。始動直後はやや懐疑的な見方があったが、およそ2か月の時を経て、信頼関係は分厚くなっている。
 
 主将のCB井林章が「まだ監督の要望に応え切れてはいませんが、確実に進歩している。その手応えはあります」と言えば、新加入の元日本代表MF橋本英郎も「守備のところは結果も出てるし良い方向に向いてる」と話す。なにより、上昇志向が強い若手主体のチームはエネルギーに満ち溢れ、雰囲気がすこぶる良い。組織の熟成は予想以上のスピードで進んでおり、大きな伸びしろを持つ、じつに先行きが楽しみなチームである。
 

次ページ「6、7チームが上位を争う展開となる」。

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