なぜ長谷部はドイツでコンスタントに活躍することができるのか!?

2017年03月09日 中野吉之伴

大きな怪我をせず、試合に出場し続けた結果の記録樹立を喜ぶ。

長く上質の経験を積んだ者だけが身に纏うことができる凄味とオーラが、フランクフルトの20番にも備わってきた。 (C) Getty Images

 3月5日、ブンデスリーガ第25節のフライブルク戦にフル出場したフランクフルトの長谷部誠は、奥寺康彦氏が保持していたブンデスリーガ日本人最多出場記録を更新した。
 
 08年1月1日にウォルフスブルクへ移籍を果たしてから、約10年をかけて辿り着いた235試合という数字は、長谷部にとってどんな意味があったのだろうか。
 
 新記録達成となったフライブルク戦後でも、長谷部は長谷部だった。普段通り、落ち着いた様子で以下のようにこれまでの歩みを振り返っている。
 
「通過点って言いたいんですけど、正直、記録は意識していませんでした。ただ、積み重ねるってことは簡単なことではないのは分かっていますし、大きな怪我をしたり、試合にコンスタントに出なければ、打ち立てられなかったものだと思います」
 
「もちろん、周りの方の協力もあってですけど、自分のなかでもサッカー選手として今まで突き詰めてやってきた部分はあるので、そういうものの結果として、この記録を評価していただくのは、もちろん非常に嬉しく思います」
 
 日本人記者の取材を受けると、今度はテレビインタビュー、そしてドイツ人地元記者にも囲まれる。また、この試合でキャプテンも務めた長谷部には、チームを代表してメディアの前で話をする義務がある。激高することなく、時に笑みを浮かべながら、明確に言葉を紡ぎ出していく。
 
 ひと通りの取材を終えて、控室に向かう長谷部。そこへ番記者と思しきドイツ人がすっと長谷部のもとに歩み寄る。短い言葉を交わした後、がっちりと握手を交わしていた。記録達成の祝福の言葉を伝えたのだろうか。長谷部は嬉しそうに微笑んでいた。
 
 誰もが認める信頼感が、そこにはあった。それを培ってきた歩みが、長谷部の持つ何よりもの強みだろう。
 
 長谷部は、ヴォルフスブルク、ニュルンベルク、フランクフルトの3クラブで、実に9人の監督(暫定監督は除く)の下でプレーしてきた。
 
 フェリックス・マガト、アルミン・フェー、ローレンツ=ギュンター・ケストナー、スティーブ・マクラーレン、ディーター・ヘッキング、ミヒャエル・ヴィージンガー、ヘルトヤン・フェルベーク、トーマス・シャーフ、ニコ・コバチ……(マガト、フェー、ケストナーは2回ずつ)。
 
 ヴォルフスブルクでは右SBでの起用が多く、主力メンバーから外されていた時期も長くあった。ニュルンベルクでは主力として期待されながらも、ヒザを負傷し、2度の手術を受けなければならなかった。
 
 そして、フランクフルトに来てからはレギュラーとして活躍。紆余曲折がありながらも、常にベストパフォーマンスを出そうとしてきた。
 
 そうした積み重ねがあるからこそ、今シーズンは大黒柱のひとりとして監督、首脳陣、チームメイト、そしてファンから、高い信頼を集めているのだ。

次ページ常に冷静な長谷部のような存在がチームの浮沈の鍵を握るはず。

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