“敵”として見たU-20日本代表とは――。「下手なミスが全然ない」

2017年03月09日 松尾祐希

U-19アジア選手権ではセカンドGKだった廣末が見たU-20日本代表。

U-20日本代表は、若手中心のFC東京を相手に2-0と勝利。これまでともに戦ってきた仲間たちのプレーを、廣末はどう感じ取っただろうか。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 昨年10月のU-19アジア選手権で日の丸を背負った廣末陸は、セカンドGKとしてU-20W杯出場に大きく貢献。現在は5月に行なわれる本大会出場を目指している。しかし、今月7日から2日間に渡って行なわれた今年初の代表合宿はメンバー外となった。

 
 そのため、8日の練習試合はFC東京のGKとしてゲームに参戦したが、どんな理由であっても代表落ちは悔しいモノだ。それは「もちろん呼ばれたかった」という彼の言葉からも分かる。
 
 一方で、対戦相手として代表チームを客観的に見る機会は滅多にない。だからこそ、廣末にとっては今回のトレーニングマッチは重要な一戦だった。
 
 その中で、敵となったU-20日本代表に廣末が感じたのは守備の安定感である。
「U-19アジア選手権もそうでしたけど、今日の試合も代表チームは無失点だった。(FC東京に)決定機があったのですが、そこを無失点に抑えるところが彼らのすごく良いところ」。
 
 2-0のスコアでU-20日本代表は勝利を掴んだが、決定機はどちらにもあった。特にピーター・ウタカが退く37分までは、背後のスペースをFC東京が効果的に活用。ゴールになってもおかしくない場面が幾つかあった。若き日本代表が先に失点していれば、どちらに勝利が転んでもおかしくなかったはずだ。
 
 しかし、U-20日本代表はDF陣の奮戦で最後までゴールを相手に与えなかった。とりわけ目立ったのは、前半は板倉滉(川崎)と町田浩樹(鹿島)、後半は冨安健洋(福岡)と杉岡大暉(湘南)が組んだCBコンビ。きっちりと身体を寄せ、最後の局面で相手を潰す作業を徹底して貫き通した。劣勢を撥ね返す集中力は、敵ながら賛辞を贈る程の出来だったのは間違いない。
 
 一方の攻撃は「ギアの変え方がすごく上手かった」と廣末は語る。
「攻撃で自分たちの時間を作る作業とボールを取りにいく時。このギアの変え方はすごく良かった。自分たちも(相手が)ギアを変えた時にすぐ相手に付いていかないといけないので、かなり嫌だった。個々の技術も高いので、下手なミスは全然なくて、ボールをなかなか取れなかったなと思う」
 
 実際にU-20日本代表は前半から縦にボールを運ぶ時間と、遅攻を効果的に使い分けていた。17分に森島司(広島)がPKの流れから先取点を奪った場面。岩崎悠人(京都)の縦パスに森島が反応したプレーがきっかけとなり、ペナルティエリア内でのファウルが生まれている。
 
 攻撃のギアチェンジに関しては、U-20日本代表の内山篤監督も「カウンターに行くのか、マイボールにするのか。特に前半は奪ったあとのファーストチョイスを意識させていた」と試合前に選手へ伝えていた。そういう意味で相手GK・廣末の賞賛は、U-20日本代表の狙いがしっかりと反映されていた、なによりの証だ。
 
"敵"として代表と対峙するという貴重な場を得た廣末。今後はこの経験をどう生かしていくかがポイントだ。
「ディフェンスも固いので、1試合で数少ないピンチを抑えるプレーがGKにできること。そこに加えて、細かいところのコーチングや攻撃で関わっていく自分の特徴を生かしながら、代表チームでプレーしたい」と廣末。この一戦でチームの強みを再確認した男は、再び日の丸を背負うべくFC東京での研鑽に励む。
 
取材・文:松尾祐希(サッカーライター)
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