【鳥栖】イタリア人監督にアウェー起用を決意させた18歳ルーキーの大物感漂うデビュー戦

2017年03月06日 竹中玲央奈

「今日だから使わなければいけないんだ」とフィッカデンティ監督。

[J1・2節]川崎 1-1 鳥栖/3月5日(日)/等々力

 1-1の膠着状態で迎えた63分、アウェーチームの鳥栖が富山貴光に代えて投入したFWは、今季鳥栖U-18から昇格した田川亨介だった。

 
「川崎のようなチームとアウェーでやるということで、こういう試合で使うからこそ若手は成長する。『今日だから使わなければいけないんだ』という決意を持って彼を使いました」
 
 結果的に勝点1を持ち帰ることとなった鳥栖の指揮官・マッシモ・フィッカデンティ監督は18歳になったばかりのルーキーの起用の意図をこう語った。
 
 結果的にこの起用は"成功"だった。背番号27を背負ったこのFWのプレーから漂う風格は、並のルーキープレーヤーのそれとは一線を画しており、見るものに大きな期待感を抱かせてくれた。
 
 2トップの一角に入ると、豊田が競ったロングボールのこぼれ球にいち早く反応し、積極的に川崎ディフェンスラインの裏を狙ってゴールへ向かう。82分には右サイドから藤田が上げたクロスで生まれたゴール前の混戦に素早く反応するなど「何がなんでも自分が点を取る」という覇気を常に出していた。
 
 結果的に決勝点を奪いヒーローになることはできなかったが、インパクトは十分で、新たな鳥栖の戦力として計算が立つ存在であることを証明したと言って良い。
 
「監督にも出るまでに"どんどん裏を狙っていけ"というのを言われていた。自分の持ち味はそれだけですし、ゴールにはならなかったけど、この回数を増やしていったら、いつかゴールに結びつくかなというのは思っていました。けっこうな時間出られて、自分の持ち味もちょいちょい出しながらプレーできていたかなと」
 
 デビュー戦を田川はこう振り返る。だが、デビューできた喜びと試合を決められなかった悔しさを天秤にかけると、やはり後者が大きいようだ。
 
「まだまだです。FWだから点を取らないと。結果を残さないと意味がないし、高卒だろうがそれは関係ないので、点にこだわっていきたいです。高卒だからという甘えもないですし、出たら点を取るというのは常に思っているので、満足はしていないです」顔をしかめながらこう口にした。
 
 181センチというサイズ、左足のパンチ力あるシュートを持ちながらも、自信を持つのは走力だ。「スピードに乗ってドリブルで自分がゴールを取るというのが理想の形」であり、理想像はガレス・ベイルだと言う。そこまでのプレーは見せられなかったが、今後どこまで理想に近づけるか注視してみたいところだ。
 
 5月に行なわれるU-20ワールドカップのメンバーに入る資格を有し、これまで候補キャンプに招集された実績もある。この日見せたパフォーマンスを断続的に披露し、リーグで数字を記録すれば――。日の丸を背負い、世界の舞台で戦うメンバーの中に、彼が名を連ねる可能性は十分にあるだろう。
 
取材・文:竹中玲央奈(フリーライター)

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