【蹴球日本を考える】スペインでは俊輔も対象に… Jにはない期待に応えられぬ選手への意思表示

2017年03月06日 熊崎敬

南米、欧州の観客席なら確実に厳しい拒否反応が出ていたはず。

開始7分で先制を許した柏は、2012年以来ホームで負けのなかったG大阪に完敗を喫した。写真:田中研治

[J1リーグ2節]柏1-3G大阪/3月5日(日)/柏

 サッカーダイジェスト的に採点をつけるとしたら4.5、もしくは4か。G大阪に1-3と完敗した柏の右サイドバック鎌田の評価だ。
 
 全体的に出来が悪かった柏の中でも、とりわけ鎌田は試合の流れについていけず、味方の足を引っ張っていた。序盤から対面の藤春、アデミウソンに振り回され、先制点の場面でも自分のサイドをあっさりと崩された。
 
 精神的に委縮していたのだろう。前半終了間際には攻撃に上がるべき場面で、怖がって後ろにいたため、チームメイトに前に出るようにうながされていた。
 
 いまの柏は20歳のセンターバックコンビ、中谷と中山が技術とアイデアを出し合いながら巧みにボールを前へと運んでいく。だが右サイドの鎌田が敵と駆け引きする余裕がないため、後ろでのパス回しは手詰まりとなった。
 
 不思議だったのは、下平監督が鎌田を75分まで引っ張ったことだ。代わってピッチに立った古賀は、まだJリーグデビューを飾っていない18歳。経験を不安視したのかもしれないが、前半で鎌田に見切りをつけても良かったと思う。
 
 力量が明らかに足りない選手が、1-3と負けているのに終盤までピッチに立ち続ける。こういう現象は、日本くらいかもしれない。南米やヨーロッパでは、観客から確実に拒否反応が出るからだ。
 
 思い出すのは2006年のドイツ・ワールドカップでのブラジルだ。クロアチアとの初戦を迎えたブラジルでは、エースのロナウドが前線でちんたら歩いていた。そのうちロナウドにボールが渡るたびに、観客席のブラジル人たちが罵声を浴びせるようになった。
 
 こうなると監督のパレイラも、ロナウドを出し続けるわけにはいかない。69分でロナウドを引っ込め、代わってロビーニョをピッチに送り出した。ブラジルは、この試合を1-0で制した。
 
 スペインでも似たような場面を見たことがある。

 エスパニョール時代の中村俊輔は、後方からのパスをよくそのまま後ろに返していた。前を向くのが怖いからだ。

 だが、ファンは許してくれない。最初は「ん?」という感じだが、それが2本、3本と続くたびに「おいおいおい……」に変わり、やがてスタジアムが大きなざわめきに包まれるようになる。

 中村は観客の信頼を得られず、ベンチを温める時間が増えていった。
 
 こうした期待に応えられない選手への意思表示が、Jリーグではほとんど見られない。この日の日立台もそうだった。サポーターは必死に叫んでいるだけ。自分たちの貴重なお金と時間を割いているというのに、その自覚がないから、消化不良なプレーを見続け、悪い結果を持ち帰る羽目になる。
 
取材・文:熊崎 敬(スポーツライター)
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