【連載】蹴球百景 vol.12「『キング』と元チェアマンのツーショットに思うこと」

2017年03月01日 宇都宮徹壱

開幕戦で奇跡のツーショットが実現する。

横浜FC対松本の試合後、ふたりは多くの報道陣に囲まれながら写真に収まった。(Yokohama. 2017)写真:宇都宮徹壱

 2月26日は今季のJ2開幕日であり、「キング・カズ」こと三浦知良の50回目の誕生日でもあった。この日、横浜FCのホームゲームが行なわれたニッパツの観客数は、満員御礼の1万3244人。報道陣の数はJ2では異例の300人近くに上った。試合の結果(野村直樹のゴールで横浜FCが松本に1-0)、そしてカズのパフォーマンス(65分間プレーしてシュート1本)、いずれもここで多くを語る必要はないだろう。本稿では、ゲームの枠を超えた「ある光景」について、個人的に思ったことについて言及したい。
 
 試合終了後、カズはゆっくりグラウンドを一周しながら、サポーターに手を振って笑顔で挨拶をしていた。そして横浜FCのゴール裏では、殊勲の決勝ゴールを挙げた野村と一緒に開幕戦の勝利を喜び合い、自身もサポーターから盛大に誕生日を祝福されていた。もっとも、カズのバースデーを現地で祝ったのは、ファンやチームメイトだけではない。「あ、カワブチさんだ!」という同業者の声に振り返ると、何と初代チェアマンでJFA最高顧問の川淵三郎氏が登場。ここに、カズとの奇跡のツーショットが実現した。
 
 現在80歳の川淵氏と50歳になったばかりのカズ。一定の年齢を重ねた者なら誰もが、このツーショットに24年前のJリーグ開幕の華々しいイメージを重ねることだろう。1993年5月15日の東京国立競技場。川淵氏はチェアマンとしてJリーグの開幕を高らかに宣言し、カズはヴェルディ川崎のスター選手として横浜マリノスとの開幕戦に出場した。この試合でピッチに立った選手は、カズを除いて全員がすでにスパイクを脱いでいる(ベンチで出番のなかった永井秀樹も、昨シーズンをもって引退した)。
 
 若いサッカーファンには「超ベテラン」のイメージしかないカズだが、そのキャリアは波乱万丈であり、実のところ順風満帆であったとは言い難い(あれだけ切望していたワールドカップ出場も果たせなかった)。川淵氏もまた、JリーグチェアマンからJFA会長(当時の名称は「キャプテン」)に転じ、日本サッカー界のトップに君臨してきたという印象は強いが、ファンの間で毀誉褒貶が激しかったことも事実である(実際、Bリーグ開幕で再び脚光を浴びるまでは一時「過去の人」扱いだった)。

 今季、Jリーグは25年目の新シーズンを迎えた。「百年構想」を謳うJリーグは、その4分の1が過ぎようとしている。その開幕日が、カズの50回目のバースデーとなったことは、もちろん偶然である。が、4年前の13年5月15日に国立で行なわれた「Jリーグ20周年」のセレモニー(FC東京対新潟@ナビスコ杯)と比べて、格段に盛り上がったという事実は留意すべきだろう。カズが「Jリーグ(開幕)」のアイコンであり続ける限り、彼の引退はまだしばらく先の話になりそうだ。

 
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